報道発表資料
【通知】平成19年繁殖期におけるヤンバルクイナ飼育個体の繁殖について(中間公表)
2007.04.06 那覇自然環境事務所
過年度において傷病等の理由により緊急的に保護され、現在飼育下にあるヤンバルクイナの個体同士が、今年の繁殖期において自然繁殖に成功し、今般、6羽のヒナが誕生しましたのでお知らせいたします。
残念ながら、1羽は生後4日で死亡しましたが、5羽は順調に生育しています。
また今現在も、抱卵中の個体があり、本繁殖期における今後の孵化も期待されます。
ヤンバルクイナの生態については未だ不明な点も多いため、繁殖から産卵、育雛までの行動などを飼育下において観察できたことは、本種にかかる知見の集積という面において、大変有用なものと考えています。
一方、孵化成功率は必ずしも高くないため、飼育下で安定的に繁殖を行わせるためには、これから解決すべき課題が多くあるものと考えています。
環境省では、絶滅のおそれのあるヤンバルクイナの保護増殖事業を、今後も一層推進していく所存です。
1 飼育下における自然繁殖の成功
傷病等の理由で、環境省が緊急的に保護し、現在飼育下にあるヤンバルクイナの個体同士が、今年の繁殖期に、NPO法人どうぶつたちの病院のヤンバルクイナ救命救急センター(国頭村)において3組のつがいを形成し、自然繁殖を行いました。
つがいを形成した6個体のうち、5個体は平成18年度中にそれぞれ卵の状態で保護され、人工的に孵化して成鳥となった個体です。残りの1個体は、平成18年度中に、負傷した状態で保護されたヒナで、失明しているため野生復帰は困難ですが、飼育下で順調に生育していた個体です。
2 孵化の状況
一つがい目は、抱卵中に食卵(親鳥が卵をつついて壊すこと)行動が見られたため、3卵を採取して孵卵器に収容し、3月下旬にその3卵ともが孵化しました。そのうち1羽は生後4日に死亡しましたが、残りの2羽は現在も順調に生育しています。
二つがい目は、産卵以降、継続した抱卵(3卵)が確認されていたもので、4月5日までに3羽のヒナの誕生しました。
三つがい目は、繁殖及び産卵を行ったものの、孵化までは至りませんでした。
3 今回の繁殖について
今回、飼育下において、6羽のヒナが誕生したことは、絶滅のおそれのある種の保存という面において、大変喜ばしいことであると考えています。また、ヤンバルクイナの生態については未だ不明な点も多いため、繁殖から産卵、育雛までの行動を飼育下において観察できたことは、本種にかかる知見の集積という面において、大変重要なことと考えています。
一方、親による食卵行動や死籠卵(孵化直前に胚の発達が停止してしまうこと)の発生など、孵化に至らなかった事例については、要因が必ずしもはっきりとしていないため、本種を飼育下において安定的に繁殖させるためには、これから解決すべき課題も多いものと思われます。
今後、環境省としては、ヤンバルクイナの飼育下繁殖試験の実施を予定しているため、この知見を有効に生かしていきたいと考えています。
重要なお願い
繁殖期の個体はかなり神経質になっており、ストレスによる食卵なども懸念されることから、ヤンバルクイナ救命救急センターにおける取材は当面受け付けることができません。
取材や画像など希望の場合は、那覇自然環境事務所(澤志)もしくはNPO法人どうぶつたちの病院長嶺(090-3790-5613)までご連絡ください。
連絡先
環境省那覇自然環境事務所
所長 中島 慶二
担当 澤志 泰正
TEL:098-858-5824
FAX:098-858-5825