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沖縄奄美自然環境事務所

報道発表資料

2013年07月03日
  • その他

報道発表:沖縄島北部地域におけるマングース防除事業の平成24年度の実施結果と平成25年度の実施計画について(お知らせ)

那覇自然環境事務所

 環境省那覇自然環境事務所と沖縄県環境生活部自然保護課では、連携協力して、沖縄島北部地域において外来生物法に基づくマングース防除事業を行っています。本事業では、塩屋湾(大宜味村)と福地ダム(東村)を結ぶ線(SFライン)より北の地域(完全排除地域)からマングースを根絶することを目標としています。

(1)平成24年度事業の結果

マングースの捕獲結果
 沖縄県はSFラインから国頭村伊地と安波を結ぶラインまで、環境省はこの伊地と安波を結ぶライン以北の地域でそれぞれ捕獲を実施し、合計203頭のマングースを捕獲しました。平成23年度に比べて、マングースの捕獲数、CPUE(100わな日あたりの捕獲数)ともに減少しました。また、平成24年度は、これまで少数ながら捕獲があった国頭村安田周辺でも捕獲がありませんでした。これらのことから、沖縄島北部地域に残存するマングースの個体数は少ない状態が継続しており、分布域も縮小してきていると考えられます。
ヤンバルクイナの回復状況
 これまでのマングース対策により、ヤンバルクイナなどの在来生物の回復が見られています。とくにヤンバルクイナについては平成21年度頃までは、マングースの北上に伴ってヤンバルクイナの分布域が狭まる傾向が見られていましたが、平成24年度には分布域、生息数が回復していることが確認されています。

(2)平成25年度事業の計画

 平成25年度からは新たに「第2期沖縄島北部地域におけるジャワマングース防除実施計画(第2期計画)」に基づいて、平成34年度までに完全排除地域からマングースを根絶することを目標に作業を開始しています。沖縄県は完全排除地域の南部においてマングースのさらなる低密度化を目標とし、集中した捕獲作業等を行い、環境省は完全排除地域の北部においてマングースの地域的な根絶を目標とし、捕獲に加えて探索犬、センサーカメラ等によるモニタリングを集中して行っていきます。また、沖縄県と環境省の合計で142万わな日の達成を目標とします。

1.背景

 マングースは1910年に沖縄島の那覇郊外に持ち込まれた外来生物です。沖縄島南部に定着し、次第に分布域を拡大して、1990年代には塩屋湾(大宜味村)と福地ダム(東村)を結ぶ線(SFライン)より北へ侵入したと考えられています。マングースの分布域拡大に伴って、ヤンバルクイナなどの希少生物の分布域の縮小や生息数の減少が明らかになりました。
 このため、平成12年度から沖縄県が駆除事業を開始し、平成13年度からは環境省も駆除事業を開始しました。平成17年度には、「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律(外来生物法)」に基づいて特定外来生物に指定され、マングースをSFライン以北から根絶する防除実施計画を立て、この計画に沿って環境省と沖縄県が連携して防除事業を実施してきました。これまでの対策により、マングースの生息数は大きく減少し、ヤンバルクイナなどの在来生物の回復傾向が見られています。また、マングースの捕獲に関する各種データの蓄積も進み、マングースの完全排除に向けた方策を検討できる状況になってきました。
 平成24年度には、これまでの成果を踏まえて防除実施計画の見直しを行い、新たに平成25年度から平成34年度までの10年間でマングースを完全排除することを目標とした「第2期沖縄島北部地域におけるジャワマングース防除実施計画(以下「第2期計画*」という。)」を作成しました。平成25年度からこの計画に基づいて事業を行っています。
 *第2期計画:https://kyushu.env.go.jp/naha/wildlife/data/gairai/boujyo/130425a.html

2.平成24年度防除事業の結果

(1)
実施期間
環境省
平成24年4月1日から平成25年3月31日まで
沖縄県
平成24年5月7日から平成25年3月31日まで
(2)
事業実施区域
環境省
国頭村(伊地-安波ライン以北)
沖縄県
国頭村、大宜味村、東村(SFライン以北から伊地-安波ラインまで)


図1.平成24年度事業実施区域

(3)実施体制

 平成24年度当初は環境省18名、沖縄県18名の計36名のやんばるマングースバスターズ(以下「バスターズ」という。)で捕獲作業等を実施しました。

(4)捕獲結果

 平成24年度の捕獲努力量(わな日数)の環境省と沖縄県の合計は1,421,164わな日(沖縄県850,462わな日、環境省570,702わな日)、マングースの捕獲数は202頭(沖縄県191頭、環境省11頭)でした。なお、捕獲作業には、従来使用してきたカゴわなに加えて、平成20年度から導入した捕殺式筒わな、平成24年度から導入したソフトキャッチ(生け捕り式足括りわな)を在来生物の分布状況に配慮しながら使用しました。また、探索犬とハンドラーの連携による、わなによらない捕獲(非わな捕獲)が1頭ありましたので、捕獲数の合計や203頭になります。
 SFライン以北でのマングース捕獲数、CPUE(100わな日あたりの捕獲数)は前年度に比べ、若干の減少にとどまりましたが、最も捕獲数の多かった平成19年度と比べると、3分の1程度の捕獲数であるため、沖縄島北部地域におけるマングースの個体数は依然少ない状態と考えられます(表1、図2)。また、これまで国頭村安田周辺で少数ながらマングースが捕獲されていましたが、平成24年度は捕獲がありませんでした。さらに大宜味村、東村においても海岸側では捕獲が少なくなっていることから、マングース分布域が縮小している可能性があります(図3)。
 マングースの他に、在来生物に悪影響を及ぼすおそれのある外来生物としてクマネズミ1,148頭、ノネコ4頭も捕獲、排除しました。在来生物はオキナワトゲネズミ8頭、ケナガネズミ71頭、ヤンバルクイナ21羽、アカヒゲ205羽などが混獲されました。混獲された在来生物の多くは捕獲地点にて放逐しましたが、カゴわなで捕獲されたアカヒゲ2羽、筒わなで捕獲されたオキナワトゲネズミ1頭、ケナガネズミ16頭、アカヒゲ5羽はわな点検時にわな内で死亡していました。

表1.平成24年度までのマングース捕獲結果



図2.SFライン以北のマングースの捕獲数と捕獲効率の年度別推移
※CPUE=捕獲数/捕獲努力量×100

図3.マングース捕獲状況
(左上:24年度、右上:23年度、左下22年度、右下21年度)

(5)マングース探索犬によるモニタリング

環境省は平成21年度より、沖縄県は平成23年度よりマングースやその痕跡を探索することができるマングース探索犬(シェパード、図4)を導入し、マングースの分布状況の把握を開始しています。平成24年度は合計で710.4kmの探索を行い、386件のマングースの痕跡(糞386件)を発見しました。マングースがしばらく捕獲されていない地域で痕跡が確認されたり、痕跡の確認地域の周囲でマングースが捕獲される事例もあるなど、探索犬ならではの成果が得られました。
さらに、昨年度から沖縄県が導入した探索犬(テリア、図5)は、マングースの臭いを探索するだけでなく、遭遇したマングースを追跡し、樹洞などに追い詰めることで、マングースを捕獲することが出来ました
今後は マングースの生息確認だけでなく、マングースを捕まえることにも活躍すると期待されます。
※探索犬が直接、動物に噛みつくわけではありません。追い詰めたマングースは人が捕獲します。

(6)在来生物(ヤンバルクイナ) の回復状況

 ヤンバルクイナは、発見当初の1980年代には大宜味村塩屋湾と東村平良湾を結ぶライン(STライン)以南でも生息が確認されていましたが、マングースの北上に伴い、分布域が縮小しました。環境省のプレイバック調査※では、平成21年度には国頭村と東村の一部でしか生息が確認できませんでした(図6右,合計128メッシュで確認)。しかし、マングースの防除が進み、マングースの個体数及び分布域が縮減したことで、ヤンバルクイナの分布域、生息数が回復する傾向が見られはじめました。平成24年度は、特に東村側で連続して確認されるメッシュが増加しました(図6左,合計152メッシュで確認)。また、北からの連続した分布とはなっていませんが、大宜味村の大保ダム周辺、東村の福地ダム周辺でも生息が確認されました。
※プレイバック調査:スピーカーで鳴き声を流し、鳴き返す個体を記録する調査


図6.ヤンバルクイナの生息確認調査結果
(左:平成24年度、右:平成21年度)

3.平成25年度マングース防除事業の実施計画

 平成25年度から新たに第2期計画に基づいて作業を開始しています。SFライン以北を「完全排除地域」として、これを8つの根絶作業区域に分割し、順次地域根絶を確認しながら南下させていく計画です。平成25年度はこれまで捕獲がほとんどされていない地域(図7、根絶作業区域Ⅰ)において地域的な根絶を達成すること、完全排除地域の中でも比較的マングースの生息密度の高い地域(根絶作業区域ⅤからⅧ)でより効果的にマングースの低密度化を達成することを目標として、以下の作業を行っています。

(1)捕獲作業

環境省は4月1日より、沖縄県は5月7日より捕獲作業等を開始しています。作業を行うバスターズは合計で35名(環境省20名、沖縄県15名)です。事業実施区域は、環境省は根絶作業区域ⅠからⅣ、沖縄県は根絶作業区域ⅤからⅧとしています。捕獲作業は、カゴわなと筒わな、ソフトキャッチを使い分け、あわせて年間142万わな日(環境省64万わな日、沖縄県78万わな日)を達成することを目標とします。

(2)マングースのモニタリング及び捕獲作業との連携

探索犬やセンサーカメラ、ヘアトラップを増やすことで、マングースのモニタリングを強化し、地域的な根絶の確認を行います。さらに、モニタリングで得られた情報と捕獲作業を組み合わせることで、マングースのより効果的な捕獲方法を検討します。

(3)在来生物の回復状況調査

沖縄県では、平成20年度から実施している希少種回復実態調査(主に鳥類と両生類を対象)を継続して実施します。また、バスターズがマングース捕獲作業中に発見した在来生物の情報などを引き続き収集することで、現在の分布域を把握し、回復状況を評価していきます。

(4)マングース北上防止柵のモニタリング

沖縄県は平成17年度から18年度にかけてSFラインにマングースの移動を阻止するために第1北上防止柵を設置しました(図7、第1柵)。さらに、平成23年度から24年度にかけてSTラインに新たに第2北上防止柵を設置しました(図7、第2柵)。これら2本の柵によって完全排除地域とマングースが高密度に生息する南部地域との間にバッファーゾーン(緩衝地帯)ができました。将来、このバッファーゾーンにおいても捕獲作業とモニタリングを行うことで、マングースがSFライン以北の完全排除地域に侵入する可能性を極めて小さくすることが出来ます。また、第2北上防止柵はタイワンスジオなどの外来ヘビ類が侵入出来ない構造となっているなど、新たな外来生物を侵入させない対策も行っています。