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沖縄奄美自然環境事務所

報道発表資料

2011年06月08日
  • その他

平成22年度奄美大島におけるジャワマングース防除事業について(実施結果等のおしらせ)

那覇自然環境事務所

 環境省那覇自然環境事務所では、奄美野生生物保護センターを拠点として、平成12年度から奄美大島においてジャワマングース(以下、「マングース」という)駆除事業を行っており、平成17年度からは、外来生物法に基づくマングース防除事業(以下、「防除事業」という)を実施しています。
 平成22年度の奄美大島における防除事業の結果、約210万わな日により305頭を捕獲しました。捕獲数は平成21年度に比べて半減し、分布域の北東部(龍郷町北部)では捕獲がない状態が続いていますが、南西部(瀬戸内町篠川周辺)では昨年度同様に生息が確認されています。全体的なマングース生息密度の低下により、アマミトゲネズミとケナガネズミの回復傾向が確認されています。

1.防除事業の実施内容等の概要

 奄美大島におけるマングース防除事業は、平成17年度に編成された専任の作業チーム「奄美マングースバスターズ」を中心に実施しています。平成22年度、奄美マングースバスターズは42名体制で捕獲作業等を実施しました。また、特定地域(岩崎産業(株)社有林内のマングース分布域)においては、平成20年度より別途の体制で捕獲作業等を実施しています。平成22年度、特定地域では6名体制で実施しました。このような体制により、現在は、マングースの推定分布域の全域で捕獲作業を実施することが可能となっています。
 捕獲作業には、筒型捕殺わな(以下「筒わな」という。)及び生け捕り式のはこわな(以下「カゴわな」という。)を使用し、アマミトゲネズミ等の在来種の分布状況に応じて、筒わなとカゴわなを使い分けました。なお、すべてのわなの設置地点をGPSで管理しています。
 平成21年度から、マングースの生息状況を正確に把握するための新たな手法としてマングース探索犬(3頭)を導入し、探索犬の訓練や探索等を実施しています。平成22年度は、糞の探知テストといった訓練等に加え、マングースが過去2年間捕獲されていない龍郷北部地域において、根絶確認を目的とした試行的探索を実施しました。これにより、一定の地域における面的な探索方法や作業量を把握することができました。

2.捕獲作業等の実施結果

(1)実施期間

 平成22年4月1日~平成23年3月31日

(2)実施区域

 奄美市名瀬地区、奄美市住用地区、龍郷町、大和村、宇検村、瀬戸内町
 なお、奄美市笠利地区においては、マングースの侵入は確認されていません。

(3)捕獲努力量・捕獲個体数等

表1.捕獲努力量・捕獲個体数・捕獲効率
 
*1 わな日: のべわな日数=わなの数×わな有効日数
*2 捕獲効率:1,000わな日あたりのマングース捕獲数
表2.平成22年度 月別のマングース捕獲状況
 
オス、メス、幼獣以外については性別等が不明な個体となる
表3.平成22年度 地域別のマングース捕獲状況
 
オス、メス、幼獣以外については性別等が不明な個体となる
図1.平成22年度 奄美大島におけるマングースのわな設置地点と捕獲地点
 
図2.奄美大島におけるマングースの捕獲頭数及び捕獲努力の経年変化
 
図3.防除事業開始以降のマングース分布域の経年変化
 

(4)結果概説

  • 平成22年度防除事業において投入された捕獲努力量は、平成21年度よりも3%程度少ない約210万わな日となりました(表1)。この結果は、昨年秋の豪雨災害によって捕獲作業が滞った期間が生じたことなどが影響しています。
    マングース捕獲数は305頭で、平成21年度の捕獲数(598頭)の半数程度、年間捕獲数としては過去最低を記録しました(表1)。さらに、マングースの生息密度を相対的に反映すると考えられる捕獲効率(1,000わな日あたりのマングース捕獲数)は0.14となり、平成21年度の半分、平成18年度の捕獲効率の5%程度にまで減少しました(表1)。これまでの防除事業の成果により、低く押さえられているマングースの生息密度が、さらに低下したものと考えられます。
  • 月別にみると、11月から1月にかけて、相対的に捕獲数が多い傾向が見られました(表2)。例年、秋から冬にかけてはその年に生まれた個体が捕れて他の季節より増加しますが、増加の程度も小さくなっているうえ、全ての月で平成21年度よりも少なくなっています。なお、10月の捕獲数が少なく(16頭)、翌月の11月が最も多い捕獲数(51頭)となっているのは、10月に発生した豪雨災害によって、10月後半はわなの点検作業が実施できず、11月の筒わな点検により10月下旬に捕獲されていた分が加算されたためと考えられます。
  • 地域別にみると、最も捕獲数の多かったのは奄美市名瀬地区(152頭)で、大和村(55頭)や龍郷町(44頭)を大きく上回りっています(表3)。奄美市住用地区では22頭、宇検村では1頭が捕獲されましたが、宇検村の捕獲効率は地域別で最も低い0.02となっており、捕獲される個体がわずかに残存している状態と考えられます。また、岩崎産業(株)の社有林内では、昨年度(30頭)と同程度の29頭が捕獲されました。
  • 一方で、平成21年度にマングースの侵入が確認された南西部の瀬戸内町においては、自動撮影による調査等によってマングースの生息が確認されるとともに、平成21年度よりも一頭多い5頭が捕獲され、捕獲効率は地区別で最も高い0.78となっています(表3)。他地域では細かなわなラインを設定し面的な捕獲作業を展開していますが、南西部についてはヘアートラップや探索犬での生息確認の後にわなを設置するため、少ない捕獲努力量で捕獲していることも影響しています。防除事業開始以降、マングースの分布域(捕獲された範囲)は北東部を中心に少しずつ縮小してきていますが、南西部での生息確認により平成21年度と同様、生息密度を考慮しない見かけ上の分布域は拡大したままの状態です。他方、分布域北東部の龍郷町の北部では、ごく少数が捕獲されるのみであり、北東部ではマングース個体群の地域的根絶化が一層進行したと考えられます
  • マングースのほか、外来種としてクマネズミ4,134頭、ノネコ13頭が捕獲されました。
    在来種の混獲は、アマミトゲネズミ1,788頭(昨年度1,225頭)、ケナガネズミ頭149(同166頭)、アカヒゲ68羽(同56羽)、シロハラ23羽(同7羽)等が確認されました。特にアマミトゲネズミとケナガネズミについては、平成20年度までのデータと比較すると、マングースの低密度化により生息状況が回復しつつあることが確認されています。なお、混獲された在来種は、捕獲時に死亡が確認された個体(アマミトゲネズミ42頭、ケナガネズミ3頭、アカヒゲ2羽等)を除き、全て捕獲地点で生きたまま放逐しました。アマミトゲネズミの死亡は42頭(昨年度16頭)に増え、このうち25頭は3月下旬の1週間ほどの間に立て続けに発生しました。今後とも、わなの構造改良や季節的、地域的な使い分けなどを通じて、混獲による死亡を可能な限り防止する工夫を継続していきます。