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報道発表資料

那覇自然環境事務所報道発表資料>2010年度

【お知らせ】平成21年度奄美大島におけるジャワマングース防除事業について(実施結果等のおしらせ)

2010.05.24 那覇自然環境事務所

 環境省那覇自然環境事務所では、奄美野生生物保護センターを拠点として、平成12年度から奄美大島においてジャワマングース(以下、「マングース」という)駆除事業を行っており、平成17年度からは、外来生物法に基づくマングース防除事業(以下、「防除事業」という)を実施しています。
 平成21年度の奄美大島における防除事業の結果、約217万わな日により598頭を捕獲しました。以下のとおり実施結果等の概要をお知らせします。

1.防除事業の実施内容等の概要

 美大島におけるマングース防除事業は、平成17年度に編成された「奄美マングースバスターズ」と称する専任の作業チームを中心に実施しています。奄美マングースバスターズは平成21年度には42名体制で捕獲作業等を実施しました。また、特定地域(岩崎産業株式会社社有林内のマングース分布域)においては、別途平成20年度より従事者6名体制によって捕獲作業等を実施しています。これにより、マングースの推定分布域の全域で捕獲作業を実施することが可能となりました。
 捕獲作業には、筒型捕殺わな(以下、「筒わな」という。)及び生け捕り式のはこわな(以下、「カゴわな」という。)を用いました。筒わなは、ルリカケス等が進入できないように改良したものを用いました。アマミトゲネズミ等の在来種の分布状況に応じて筒わなとカゴわなを使い分けました。なお、すべてのわなの設置地点をGPSで管理しました。
 マングースの生息状況を正確に把握するための新たな手法として、マングース探索犬の利活用を図るために、候補となる犬の育成、訓練を行いました。平成21年度の訓練達成度試験の結果、ニュージーランドから導入した3頭について野外でマングースを探索する技能が身についたことが確認されました。

2.捕獲作業等の実施結果

(1)実施期間

 平成21年4月1日から 平成22年3月31日まで
 なお、3月下旬には生息地に残っているマングースの生息状況を評価するため、カゴわなを100m間隔、50個設置するラインをマングース分布域の林道沿いに15ライン設定し、7日間点検するモニタリング調査を実施しました(表1.生残モニタリング;平成13年度から毎年度末に実施している調査)。

(2)実施区域

 奄美市名瀬地区、奄美市住用地区、龍郷町、大和村、宇検村、瀬戸内町
 なお、奄美市笠利地区においては、マングースの侵入は確認されていません。

(3)捕獲努力量(わな日: のべわな日数=わなの数×わな有効日数)

平成21年度:
2,174,339わな日
平成20年度:
1,899,238わな日
平成19年度:
1,379,410わな日
平成18年度:
1,051,026わな日
平成17年度:
 630,822わな日

(4)捕獲個体数

 捕獲効率*
平成21年度:  598頭  0.28
平成20年度:  947頭  0.50
平成19年度:  783頭  0.57
平成18年度: 2,713頭  2.58
平成17年度: 2,591頭  4.11
*捕獲効率は、1,000わな日あたりのマングース捕獲数
表1.平成21年度 月別のマングース捕獲状況
 
オス、メス、幼獣以外については性別等が不明な個体となる
* マングースの生残モニタリング調査は、カゴわなを用いて3月下旬に実施
表2.平成21年度 地域別のマングース捕獲状況
 
オス、メス、幼獣以外については性別等が不明な個体となる
図1. 平成21年度 奄美大島におけるマングースのわな設置地点と捕獲地点
 
図2. 防除事業開始以降のマングース分布域の経年変化

平成17年度

平成19年度

平成20年度

平成21年度

図3. 奄美大島におけるマングースの捕獲頭数及び捕獲努力の経年変化
 

(5)結果概説

  • 平成21年度防除事業において投入された捕獲努力量は、平成20年度よりも約13%多い約217万わな日となり、過去最高を記録しました。また、マングース捕獲数は598頭で、平成20年度と比較すると約37%減少し、年間捕獲数としては過去最低を記録しました。一方、マングースの生息密度を相対的に反映すると考えられる捕獲効率(1,000わな日あたりのマングース捕獲数)は0.28となり、平成20年度の約半分、平成18年度までの捕獲効率の1割程度にまで減少しました。これまでの防除事業の成果により、低く押さえられているマングースの生息密度が、さらに低下したものと考えられます。
  • 月別にみると、2〜3月に捕獲頭数が少ない傾向が見られましたが(表1)、例年のように、前年に生まれて増えた個体が動き回ることにより捕獲されやすい時期である1月に捕獲頭数のピークが現れることはありませんでした。このことから、奄美大島のマングースは生息密度が非常に低下し、昨年は例年のようには繁殖できていなかった可能性も示唆されます。
  • 地域別にみると、最も捕獲の多かったのは奄美市名瀬地区(294頭)で、龍郷町(106頭)や大和村(107頭)を大きく上回っていました(表2、図1)。宇検村においては5頭が捕獲され(捕獲効率0.13)、昨年度の1頭(同0.05)より増加しましたが、捕獲される個体がわずかに残存している状態と思われます。また、岩崎産業株式会社の社有林内では、30頭が捕獲され、龍郷町や大和村と同程度の捕獲効率(同0.23)となりました。
  • 一方で、これまではマングースがまだ侵入していないと思われていた奄美大島南西部(瀬戸内町)においても、自動撮影による調査等によってマングースの生息が確認され、4頭が捕獲されました(図1)。防除事業開始以降、マングースの分布域(捕獲された範囲)は少しずつ縮小してきましたが、南西部での生息が新たに確認されたことにより、生息密度を考慮しない見かけ上の分布域は拡大しました(図2)。他方、分布域北東側周辺部の龍郷町北部、奄美市住用地区などの地域ではごく少数の捕獲が見られますが、北東部ではマングース個体群の地域的根絶化が一層進行したと考えられます。
  • マングースのほか、外来種としてクマネズミ7,325頭、ノネコ17頭が捕獲されました。在来種の混獲は、アマミトゲネズミ1,225頭(昨年度183頭)、ケナガネズミ166頭(同17頭)、アカヒゲ56羽(同25羽)、シロハラ7羽(同3羽)などが確認され、特にアマミトゲネズミとケナガネズミの生息状況が回復しつつあることが示唆されます。
     なお、捕獲時に死亡が確認されたアマミトゲネズミ16頭、ケナガネズミ6頭、アカヒゲ1羽以外の在来種は、全て捕獲地点で生きたまま放逐されました。わなの構造改良や季節的、地域的な使い分けなども含めて、混獲による死亡はできるだけ防止していく工夫を今後も継続していきます。