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アクティブ・レンジャー日記 [九州地区]

九州地区のアクティブ・レンジャーが、日々の活動や地域の魅力を発信します。

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西表石垣国立公園 石垣

132件の記事があります。

2015年02月23日2015年「世界湿地の日」名蔵アンパル自然観察会【石垣地域】

西表石垣国立公園 石垣 アクティブレンジャー 仲本

最近の石垣地域は、だいぶ冷え込む季節になりました。冷え込む時期と言っても気温は15℃程度と他の地域に比べるとかなり暖かいです。

さて、「世界湿地の日(Word Wetlands Day)」の2月2日を記念しまして、3回目となる「世界湿地の日」名蔵アンパル自然観察会を1月31日(土)に実施しました。講師にはアンパルの自然を守る会の島村さん(共同代表)にお願いしました。スタッフとして西表石垣国立公園パークボランティアのみなさんにもご協力いただきながら、無事に終えることができましたので、ご報告します。

【講師の島村さんによる解説】

当日は、あいにくの曇り空の天気で肌寒かったですが、名蔵大橋から見渡せる広大な干潟に下りて干潟の植物や底生生物を観察しながら、参加者の皆さんに楽しく自然とふれあっていただくことが出来ました。

観察会では、まず始めに講師の島村さんが幼い頃、身近にある植物で作成した遊び道具(チャンバラ、高飛び、凧揚げ)を持参し、ご紹介いただきました。参加した子供たちは遊び道具に興味津々といった感じで、欲しいといって持ち帰るお子さんもいました。また、観察時には島村さんが呼びかけて、参加者にマングローブに生育している植物を触ったり、香りを嗅いだりして色んな感覚を感じさせていました。葉の香りを調べた子供たちからは、「くさい」「いいにおい」というさまざまな声が聞かれました。きっと、普段、植物の葉を香ることはないはずなので、子供たちとって新鮮だったでしょう。

【殻にこもったオカヤドカリに息を吹きかける子供たち】

また、講師の島村さんはオカヤドカリに関しても、とても詳しい方です。海岸に生息しているオカヤドカリを探して、オカヤドカリが好む環境や種類の見分け方について解説していただきました。子供たちはオカヤドカリを手に取り、殻にこもってなかなか出てこないオカヤドカリを見ようと頑張って息を吹きかけていましたが、その姿はとてもかわいらしかったです。

【テリハボクの葉で飛行機遊び】

石垣島では、道路沿いの街路樹でよく見かけるテリハボクですが、葉は葉脈に沿ってきれいに手で千切ることができます。その特徴を利用して、島村さんが自宅の畑から採ってきたテリハボクの葉をみなさんに配布し、葉を飛行機の形にかたどり、だれが一番遠くへ飛ばせるか競い合いながら楽しみました。

今回、参加してくれた子供たちが、島村さんから教わった遊び方を参考に、身近にある自然のものから遊び道具を発明し、自然と親しんだ生活を送ってほしいとおもいました。

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2014年10月16日「右利きのヘビと左巻きのカタツムリ」講演会【石垣地域】

西表石垣国立公園 石垣 アクティブレンジャー 仲本

私たちの身近にいる様々な生き物たちは、長い年月をかけて互いに影響し合い、環境に順応しようと少しずつ生態や形などを変化させながら、進化し続けています。

さて、今回は、西表石垣国立公園パークボランティア研修会の一環として、9月23日(火)に進化生物学に関する講演会を開催しましたので、ご報告します。


写真1:講演会開会時の様子

講師は、京都大学白眉センターで進化生物学を研究され、西表島と石垣島を調査フィールドとしている特定助教の細将貴氏をお招きしました。私たちヒトにも利き手などがあるように、他の生き物にも利き手や利きあごのようなものが存在します。たとえば、片方のハサミが大きなシオマネキ、巻き貝やヒトのつむじの巻き方向の違い、ほ乳類が胸の左側に心臓が備わっているように、体の左右で違った機能をもっていることなどが上げられます。どれもなじみのあるものですが、なぜそうなっているのかは意識しないものばかりです。細氏は、そこに目を付け、進化生物学の観点から、ダーウィンの唱える自然選択説に反する非・適応進化について研究され、西表島と石垣島に生息しているイワサキセダカヘビとそこに生息しているカタツムリが奇妙な進化を遂げていることを発見し、進化がなぜ起きたのか、どのようして進化してきたのかを解明する研究をされています。


写真2:イワサキセダカヘビがカタツムリを捕食する実験映像

カタツムリを横から見てみると、らせん状に巻いた貝殻をしています。その殻の口が右か左かで右巻きか左巻きかがわかり、多くの種類は右巻きをしていますが、細氏はセダカヘビ類が生息している分布域には左巻きのカタツムリが少数ですが分布していることを発見しました。本来、カタツムリは逆巻き同士では交尾がうまくいかず、左巻きのカタツムリが突然変異で生まれても、左巻き同士のペアが巡り会わなければ、生涯、子を残すことはなく滅びる定めにあります。
セダカヘビはカタツムリを主に食べるヘビです。細氏はセダカヘビが「右利き」で、セダカヘビ類が生息している分布域に左巻きのカタツムリが分布しているのは、セダカヘビに食べられないよう進化を促進させているのではないかと仮説を立てたのです。セダカヘビの頭部の骨格標本の下あご歯列を調べると、右の歯が左の歯の本数よりも多く、右の歯を使って獲物を食べていることがわかり、「右利きのヘビ仮説」を証明したのです。さらに根拠を深めるために捕食実験をすると、右巻きのカタツムリは、すぐに捕食されましたが左巻きのカタツムリの捕食には、圧倒的に長く時間がかかり、うまく捕食できず、取り逃がしてしまうことがわかったのです。これだけ明確に左右非対称性の歯をもつ動物は他にいないそうです。
今回は、これらの興味深い研究についてスライドを用いて、わかりやすい図や実験映像を交えながら説明していただきました。
参加者のみなさんからは「これまで生き物の左と右について考えてこなかったので、お話を聞いてとても興味深く楽しかった」「進化はどのくらいで起こるのか」「小さい頃から左巻きのカタツムリを探している」などさまざまな感想が聞かれ、質問も多く上げられました。細氏は、いろいろな質問に丁寧にお答えしていただき、参加者からはいろんな意見が聞けて楽しかったと好評でした。


写真3:質疑応答時の様子

私も細さんの聴講をお聞きし、ユニークな研究でとても興味深く、生き物の進化の面白さを改めて知りました。今後もこのような講演会を開催していきたいです。

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2014年09月10日盛りだくさん!サンゴの海の自然観察【石垣地域】

西表石垣国立公園 石垣 アクティブレンジャー 春口

 こんにちは。石垣自然保護官事務所の春口です。アクティブレンジャー日記を書かなければと思いながら、気がつけばもう9月。すっかりご無沙汰してしまいました。
 毎年恒例となっているスノーケリングでの観察会、「海の自然教室」を今年も開催しました。パークボランティアの皆さんのご協力をいただき、7月には22名、8月には14名の方を海へと案内しました。この日記では8月の行事についてご紹介します。

 8月16日(土)に『「海の自然教室(米原)」&「わくわくサンゴ石垣島プロジェクト」共同体験会』を開催しました。「わくわくサンゴ石垣島」は石垣島内の小学生にサンゴ学習を提供するプロジェクトで、これまでも小学校への学習提供や普及啓発イベントで協力をいただいています。(これまでに協力で行った取り組みの一部を過去の日記で紹介しています。ぜひご覧ください。)
 この観察会は二者との共催行事とし、午前と午後の二部構成で行いました。午前の部では共催団体のひとつであり「わくわくサンゴ石垣島」の構成団体、八重山漁業協同組合サンゴ養殖研究班による養殖サンゴの苗作り体験です。まずは大きなサンゴ水槽の中にいる生き物探し、次にサンゴの拡大写真から同じサンゴを探し出すなどゲーム形式でサンゴの注目を高めていきます。その中でサンゴの生態に関する知識を身につけた後、養殖サンゴの苗作りに挑戦しました。切り分けられた枝サンゴを特殊なボンドで土台に固定し、水槽に移し替えます。
 今回作ったサンゴの苗はしばらく水槽で飼育し、それから海で養殖が行われます。自分の作った苗がしっかり成長してほしいと願う子どもたちへ向けて、養殖班のみなさんから「サンゴが育つにはきれいな海が必要。自分たちの植えたサンゴのためにも海を大切にしてください。」とメッセージをいただきました。



左上:サンゴ水槽の生き物探し。大きな水槽の中にいる生き物たちを探します。
右上:拡大写真から同じサンゴを探し出します。特徴をしっかりと捉えないと大人にも難しいかもしれません。
左下:いよいよ苗作り体験。このときばかりは子どもたちも静かになります。
右下:作った苗を水槽へ。これからの成長が楽しみですね。


 午後からは海域公園地区に指定されている米原海岸でのスノーケリング体験「海の自然教室」です。米原海岸にはキャンプ場が整備されており、トイレやシャワー室といった施設があります。海の自然教室は昨年度からキャンプ場を管理する石垣市の施設管理・すぐやる課との共催行事として実施しています。
昼食を摂り、参加者の皆さんが集まったところで午後の部が始まります。午前中のサンゴの苗作りを通して参加者と海の距離がぐっと縮まり、子どもたちはみんな海に入りたくてしょうがないといった様子でした。海に入る前に注意事項を説明したら、ここからはパークボランティアの皆さんの出番です。大まかなルートをあらかじめ決めて、その中で見つけた生き物を観察していきます。午前中の水槽にはいなかった形や色の違うサンゴ、カクレクマノミとイソギンチャク、星砂を作り出す有孔虫など様々な生き物を見つけてはパークボランティアさんからの解説を受けてもらいました。初めてのスノーケル体験に緊張気味だった子もすっかり泳げるようになり、海に入ってからの1時間はあっという間で充実した活動となりました。




左上:この平たい生き物もサンゴの仲間。少しだけ手にとって観察してみました。
左下:シコロサンゴの間を抜けていきます。隙間からスズメダイが顔を出しています。
右上:マイクロアトールで休憩中。何か見つけたようです。そっと覗いてみると・・・
右下:ワニゴチという魚でした。魚なのに、泳ぐのは苦手なようです。


米原海岸は島の人もよく利用する場所です。私自身もよく両親に連れて来てもらっていましたし、石垣市の担当の方もお子さんを連れて泳ぎに来ていたと教えてくれました。これからはご家族でも海へ出かけてもらいたいと投げかけ、無事に行事を終えることができました。
 今回の活動は「わくわくサンゴ石垣島」との共同体験会としたことでこれまでにない取り組みとすることができました。海の中では魚に注目が集まり、見落としがちになってしまうサンゴにしっかりと注目してもらうことが出来、サンゴ礁の海で行う自然観察会としての意義がいつも以上に深まったと実感しています。このような機会や米原という場所を通して、島の大勢の子どもたちと保護者の皆さんに海の豊かさと大切さを感じてもらえればと思います。そして石垣島の自然を大切にする心を持ち、将来にわたって見守ってくれることを願っています。

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2014年03月31日出張授業第2回in大浜小学校

西表石垣国立公園 石垣 アクティブレンジャー 春口

 出会いと別れの季節ですね。石垣自然保護官事務所もこの2ヶ月で職員の半数が変わり、新しい雰囲気となりそうです。私と仲本は引き続き勤務しますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 3月11日、大浜小学校5年生の皆さんへサンゴの授業を行ってきました。去年の10月に4年生へ出張授業を行った小学校です。これまで小学校での学習は体を動かしながら行う授業がほとんどで、他の団体の方々と協力しながら行ってきましたが、今回は電子黒板を使ってお話をする1時間。アクティブレンジャーとして一人で生徒の皆さんの前に立つのも実はこれが初めてです。いつにも増して緊張していましたが、児童の皆さんに暖かく迎えていただきました。
 まず説明するのはサンゴという「生きもの」のお話から。サンゴは固いし動かないのでなかなか生きものとして認識されにくいのですが、その正体は立派な動物です。児童の皆さんに「サンゴって生きもの?それとも石?」と訪ねるとほとんどの児童は「生きもの」と答えてくれるのですが、「それじゃあサンゴは動物?植物?」とクイズを出すと、植物と答える児童の方が多いのです。一般的にイメージしやすい、沖縄の海岸によく転がっているサンゴの固い部分は骨です。サンゴは私たちがよく見にする生きものとは違い、体の周りに骨を作って、本体は骨の間に隠れて身を守ります。サンゴの骨をよく見てみると小さな穴がたくさんあるのがわかります。



写真:塊状サンゴの骨。

この穴の間に小さなイソギンチャクがたくさん住んでいます。そして、サンゴが長い時間をかけて作り上げてきた地形をサンゴ礁と呼び、私たちは食料や観光資源として活用しています。また、昔の人はサンゴを塀や柱の支柱など、建築資材としても利用していました。石垣では古くからサンゴ礁の恩恵を受けていることがわかります―――。そんなお話を、クイズや質問のやりとりを行いながら進行していきました。



写真:質問にきちんと手を挙げて答えてくれる児童たち。(提供:大浜小学校)

後半はそんなサンゴの海に迫る危機と現在の海の様子のお話です。温暖化やオニヒトデ、陸上からの流出などサンゴが晒されている驚異を説明し、赤土が溜まってしまった海と影響を受けていない海の写真を見比べてみました。また、これらの驚異によって八重山の海がどう変化しているのか、海域のサンゴ被度(ある区間がどの程度サンゴで被われているのか)の定点調査の結果を見ながら考えていきました。最後に、自分の目でサンゴや海の生きものを観察して石垣の豊かな自然を感じる体験をしてみてくださいとお願いをして、授業を終了しました。

 後日、児童達から一人ひとりからよせられた感謝状をいただきました。サンゴがイソギンチャクの仲間で毒をもっていることに驚いたという声や、たくさんの種類がいること、きれいな海を守るためにゴミを捨てず、これからも海岸清掃をやっていきたいという言葉がたくさん綴られていました。短い学習時間の中でも、児童達はサンゴを生きものとして理解し、豊かな海に囲まれて生活していることを感じてくれたようです。


 外の世界から八重山を見てみると、たくさんの魅力に溢れている素晴らしい場所だと感じることができます。しかし、その場所に住んでいる人々には「ずっとそこにあるもの」として、価値を認識されずにいることがあります。なぜこの島に憧れてやってくる人がいるのか、どんな魅力があるのかを学校の中で学習することにより、より多くの児童達に住んでいる場所の素晴らしさ、面白さを知り、誇りに思えるふるさとになるよう、これからも力を注いでいこうと思います。

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2014年03月27日サンゴウィークにコーラルウォッチ!【石垣地域】

西表石垣国立公園 石垣 アクティブレンジャー 春口

3月5日はサンゴの日と言われています。今年のサンゴの日は慶良間諸島が国立公園に指定されました。これからは慶良間にもアクティブレンジャーが着任し、様々な取り組みを発信してくれるのではないでしょうか。
さて、石垣島では3月5日を含めた1週間を「石垣島サンゴウィーク」として、様々な団体がイベントを企画してサンゴ礁の海への理解を深める取り組みが行われています。石垣自然保護官事務所ではサンゴの健康診断、コーラルウォッチを行いながらイノー(磯、礁池)の生きものを観察する「イノーのコーラルウォッチ」を実施しました。行事には40名以上の方にご参加いただき、スタッフも石垣事務所職員だけでなくパークボランティアの皆さん、西表自然保護官事務所も応援に駆けつけてくれました。
今回の行事のもう一つの目玉は観察後の短歌作りです。ゲストとして歌人の俵万智さんにお越しいただき、この観察で感じたことをそれぞれで短歌にして表現するという企画です。俵さんは石西礁湖自然再生協議会のサンゴサポーターに任命されており、表現者として八重山のサンゴ保全を発信していただいています。



写真:ご協力いただいた歌人の俵万智さん。

まずはサンゴセンターの中でサンゴという生きものやコーラルウォッチの方法を説明し、俵さんに短歌の作り方をお話いただきました。その後グループに分かれて海岸へ向かい、コーラルウォッチと生きもの探しです。この日は少し曇っていましたが、雨が降ることもなく心地よい天気の中、ゆっくりと観察を楽しんでいただきました。サンゴだけでなくナマコやカニ、シャコを見つけては観察します。中にはタコを見つけた子もいてこちらが驚かされることも。コーラルウォッチは大人の膝下が海水に浸かる程度の場所で行うのですが、そんな限られた範囲でも子供たちはたくさんの発見をするものですね。



写真:何を見つけたのかな?

センターに戻ってからは短歌作成の時間です。スタッフも参加者の皆さんと一緒になって短歌を作り、ホワイトボードにはたくさんの作品が並びました。作られた短歌は俵さんに見ていただき、その中から数点を詠んでもらうことになっています。俵さんに作品を選んでいただいている間、生きものとしてのサンゴのおさらいと八重山のサンゴの移り変わりを説明し、住んでいる地域の海への理解を更に深めていただきました。



写真:参加者だけでなくスタッフも一緒に短歌を作りました

参加者の皆さんによって作られた短歌のうち、二つの作品を紹介します。
「くろなまこ ゆびでさわった やわらかく やさしいきもち またあいたいね」
「さわるのが はじめびくびく したけれど ふわふわくろい あったかなまこ」
この二つの作品は別々のお子さんが作りました。同じ生きものを題材としていますが、内容は違っていて感じ方がそれぞれだということを教えてくれています。短歌作りは活動を振り返ることもでき、他の方がどう感じたのか考えることもできてとても良い時間になりました。
 体験活動では何を見てどのように感じたのか、内容を振り返ることがとても大切です。今回の活動は、振り返りの方法も様々で印象に残る工夫がたくさんできると改めて感じた時間になりました。日常の小さな発見を絵や写真、言葉など自分の表現で残すことができればまた新たな楽しみになりますね。皆さんも喜びと感動を膨らませる方法、ぜひ探してみてください。

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2014年03月03日今年も実施しました「世界湿地の日」名蔵アンパル自然観察会【石垣地域

西表石垣国立公園 石垣 アクティブレンジャー 仲本

みなさん「世界湿地の日(World Wetlands Day)」をご存じでしょうか?『ラムサール条約:特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約』が1971年2月2日にイランのラムサールという都市で結ばれました。世界湿地の日は、同条約や湿地の大切さを一般のみなさんに知っていただこうと世界各地でイベントなどが催される日です。石垣自然保護官事務所では、この日にちなんで2月16日(日)に今年も『「世界湿地の日」名蔵アンパル自然観察会』を実施しましたのでご紹介します。

「世界湿地の日」では毎年、ラムサール事務局からテーマが定められます。2014年のテーマは「湿地と農業」ということで、それに関連した観察会を行いました。アンパルの自然を守る会のみなさんを講師にお迎えし、西表石垣国立公園パークボランティアのみなさんにスタッフ協力いただきました。アンパルの自然を守る会のみなさんには、サトウキビ畑などから流れ出る赤土が海へ流出してしまう原因を実験やパネルを使いながら解説していただいたほか、お子さんや大人も夢中になって砂の中に隠れているカニや貝などを探し、見つけた生き物の生活スタイルの違いなどを解説してもらったり、なかなか入ることのない「マングローブ林内の不思議」と題して、現在起こっているマングローブ林の変化とその原因を説明していただきました。このように内容盛りだくさんで充実した観察会を実施することができました。

写真:小さなケースに水を流して、赤土流出実験する様子

赤土流出実験は、小さなケースに赤土と芝生を張り詰め石垣島で多くある「サトウキビ畑」を再現し、耕した畑と芝が根を張っている畑で大雨が降った場合、どのくらい赤土が海へと流れるのかをわかりやすく比較する実験を行いました。今まで赤土問題について知らなかった子供たちや大人も石垣島で起こっている現状に関心を持たれた様子でした。

写真:干潟の生き物探し

干潟の生き物探しは、参加者に数分間自由に干潟の生き物を探してもらい、見つけた生き物などの名称や生態などを解説いただきました。当日は気温も暖かく晴れたので、たくさんのカニが出現していました。見つけた主なカニ類は、ミナミコメツキガニ、オキナワハクセンシオマネキ、リュウキュウコメツキガニでした。貝類では、アラスジケマンガイ、コゲツノブエ、カヤノミカニモリなどが見つかりました。子供たちは、カニにすごく興味を持ち、探すのに夢中でその場から離れないお子さんたちもいて、毎回お子さんはカニの虜になってしまいます。

写真:昔と現在のマングローブ林内の変化を解説する様子

マングローブ林内では、昔と現在のマングローブ林がどう変化し、なぜ変化しているのかを解説いただきました。なかなか入ることのないマングローブ林を見学して、参加者のみなさんには実際に名蔵アンパルで起こっているマングローブの立ち枯れや倒木の現状を知っていただく良い機会となりました。私も勉強になった一日になりました。

毎年2月に名蔵アンパル観察会を行っていますが、今回も親子連れで参加されるリピーターの方もいたり、参加者から「このような観察会をまたやってほしい」という声も聞かれました。これからも今回のような参加者が楽しく自然とふれあえる観察会を実施して、自然へ関心をもってくれるお子さんたちが今後も増えるといいなと感じました。


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2013年12月25日於茂登岳トレッキング【石垣地域】

西表石垣国立公園 石垣 アクティブレンジャー 仲本

12月7日(土)に、国立公園に指定されている沖縄県で最高峰の於茂登岳(標高525.5m)に西表石垣国立公園パークボランティアのみなさんと研修を目的としてトレッキングに行ってきました。当日は曇り空でしたが、山頂へ進んで行くうちに晴れ間もでてきてトレッキングするには快適な日となり、生き物など自然のことに詳しいパークボランティアの方にリードしていただき、楽しい活動が行えました。

西表石垣国立公園パークボランティアのみなさんは、西表島・竹富島など各離島にお住まいの方が多く、パークボランティア同士で交流する機会があまりないのが現状です。そこで、今回は親睦を深め身近な自然について知識を共有することを目的として、西表石垣国立公園パークボランティア主催のトレッキングが実施されました。

写真右上・左上:トレッキング時の様子
左下:昭和30年代に使用されていたと思われる炭焼き窯跡地に入り、見学している様子
右下:ヤエヤママルヤスデ

今回は、みんなで登山道沿いに生育している植物や昆虫などを見つけながら進み、昭和30年代に使用したと思われる炭焼きの窯に入り、当時どのようにして窯が造られたのかなどパークボランティアさんに解説していただいたほか、途中、ヤエヤママルヤスデ、イシガキナナフシ、タイワンサソリモドキなどの生き物を見つけ、約2時間をかけて山頂に向かいました。また、標高400m付近に水が張っている桶があり、その上の垂れ下がった枝に産卵したヤエヤマアオガエルの泡巣も発見し、標高が高い場所でもたくましく生息していることに感動しました。頂上に着くと、みなさんで頂上から一望できる山々をバックに集合写真を撮り、よい記念となりました。頂上は涼しい風が吹き気持ちが良かったです。

写真:ヤエヤマアオガエルの泡巣

写真:於茂登岳頂上からは、平久保半島まで一望できます。

トレッキングを終えて、パークボランティアのみなさんの感想をお聞きしたところ、「数回登っているが、自分の知らなかったことが多くお聞きできて勉強になり、今回いろんな発見ができてとても良かった」とおっしゃっていました。私も参加して、みなさんの自然について知識が豊富でとても勉強になり、今後も楽しいパークボランティア主催の活動が増えパークボランティア同士の親睦が深まれば良いなと感じた一日となりました。

石垣は雪が降らないので、年中山登りができます。夏はとても日差しが強くトレッキングするには少し大変なこともありますが、冬は涼しい風が吹き、とてもいいですよ。普段あまり体を動かさない人もぜひ、自然を楽しみながら山登りに挑戦してみてくださいね。


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2013年11月28日小学生企画:明石クリーン大作戦!【石垣地域】

西表石垣国立公園 石垣 アクティブレンジャー 春口

 11月24日(日)、石垣島北部の明石地域で海岸清掃「明石クリーン大作戦」が開催され、私も参加してきました。石垣では様々な団体が海岸清掃を実施していますが、今回の活動は少し特別です。というのも、この海岸清掃は小学生が企画を立ち上げ地域へと呼びかけたイベントなのです。
 これまでのAR日記でも何度か紹介していますが、明石小学校では、子どもパークレンジャーとして地域の自然の大切さを学んでいます。今回の清掃活動はこれまでの学習を通して自分達に何ができるかを考え、児童たちが企画し実行したイベントです。「明石クリーン大作戦」には明石小学校の児童や先生だけでなく地域の方々や他校の児童、小学校の卒業生など60名以上が集まりました。

 まずは、明石小の体育館で児童が学んだ成果の発表です。「海をきれいにする生き物」について調べた児童が海綿について発表しました。海をきれいにする生き物は砂に付着する微生物を食べるナマコが有名ですが、海綿は海水を取り込むことで水中に漂っている微生物を食べて生活しています。
 児童の発表を聞いて少し賢くなった後は海岸へ移動し、約150mを歩きながらゴミ拾いです。気にして歩いてみるとよくわかりますが、海岸にはペットボトルや発泡スチロール、漁具、タイヤなどたくさんのゴミがありました。
 特に多かったのはペットボトルと発泡スチロールでした。児童達は自分の体ほどの大きな発泡スチロールを、大人たちは重くなったゴミ袋をせっせと運びます。特に大きなゴミや重い漁具は捨てられていた網の上に乗せ、数名の児童で力を合わせて引っ張って行きました。先生方もトゲのある植物「アダン」の林の中へ果敢に入り込み、波や風で防風林の中へと運ばれたゴミを掻き出していました。



写真1.ゴミを集め、運搬する児童や先生、地域の方々

海岸清掃はあっという間に終わりました。用意した袋では目に入るゴミを拾いきることができなかったのです。用意した60枚のゴミ袋は1時間足らずで全ていっぱいになりました。それでも清掃前に比べるととてもきれいになり、参加者の皆さんの笑顔も見られました。
 清掃後は記念撮影をし、児童達の相撲大会とビーチフラッグも行われました。参加者だけでなく、企画した児童達もたのしく過ごしたイベントになったようです。



写真2.参加者で記念撮影。わずかな時間でもたくさんのゴミが集まりました。



写真3.清掃後のビーチフラッグ。異学年対抗レースが一番盛り上がりました。

 今回だけでゴミを拾いきることはできませんでしたが、児童たちは地域の方々と一生懸命ゴミを拾い、思いっきりレクを楽しんでいました。私たちが関わる学習をきっかけに、児童たちが進んで地域の海を守るための取り組みを行ったことは大きな意味を持ってくることでしょう。担当の先生からも「清掃活動をこの一度で終わらせたくない。」との言葉をいただき、地域に根ざした活動となることを期待しています。
また、参加した子どもたちが成長して島を離れる時がきたとき、これから出会う人々に「明石の海や自然はこんなに素晴らしい。そしてこの自然を守ってきたのは僕たちだ!」と胸を張って言えるよう、これからもサポートし、見守っていきたいと思います。

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2013年11月21日石垣島まつりに参加!【石垣地域】

西表石垣国立公園 石垣 アクティブレンジャー 春口

 気がつけば11月も残りわずか。時間はあっという間に過ぎていきますね。石垣島もここ数日で朝方は冷え込むようになりました。
 石垣島では、島民が毎年楽しみにしているイベントのひとつに「石垣島まつり」があります。会場ではたくさんの出店が並び、コンサートも行われます。今年は11月2日、3日に開催され、様々な催しがなされました。多くの島民が集まるこのお祭りでサンゴの海について知ってもらうべく、石西礁湖サンゴ礁基金が八重山の海と親しめるブースを出展し、私たちもそのお手伝いをさせていただきました。

 石西礁湖自然再生協議会から発足した石西礁湖サンゴ礁基金については、昨年度のAR日記でもご紹介しました。サンゴ礁基金では寄付を募り、寄付金でオニヒトデ駆除や赤土流出対策への支援、普及啓発活動などを実施しています。昨年7月に行われた「みなとまつり」では、普及啓発の一環としてブースを出展するとともに、サンゴサポーターのライブも行われました(以前の記事はこちら:<http://c-kyushu.env.go.jp/blog/2012/11/983.html>)。今年の5月には法人格を取得し、「NPO法人サンゴ礁基金」となりました。これにより更に活動の幅を広げていくことでしょう。サンゴ礁基金では会員を募っていますので、ぜひホームページもご覧になってください。

 石垣島まつりの展示ブースでは、募金箱の他にサンゴ礁基金や関係団体が作ったポスターやオニヒトデの生態展示のほか、子どもたち向けにクイズや塗り絵、星の砂探しコーナーも設けられました。塗り絵では、こちらも以前紹介した「わくわくサンゴ石垣島プロジェクト」の協力によりオリジナルの原画が4種類用意されました。



写真1.サンゴクイズに挑戦!



写真2.星の砂探しは終始大盛況でした。

特に盛況だったのは塗り絵と星の砂探しでした。塗り絵は男女問わず人気で、魚本来の色で描く子、オリジナルの色付けで楽しむ子など様々で、中にはヒレの色まで忠実に再現しようと頑張る子どももいました。星の砂探しでは観光で訪れた方も地元の子どもたちも虫眼鏡をつかってじっくりと探し、人が絶えることはほとんどありませんでした。また、水槽の側面を這うオニヒトデは大人の方々からも注目を浴び、口や触手をじっくりと観察していく方もいました。
今回の活動を通して、サンゴ礁基金の意志に賛同する皆さんから25,233円の寄付をいただきました。



写真3.塗り絵コーナーにもたくさんの子ども達が来てくれました。

 
 今回の活動は、島民に慣れ親しまれている行事へ参加したことがとても大きな意味を持ってくると思います。ブースには石垣市長、竹富町長も訪れていただきました。おなじみとなっているイベントを通して八重山の海の中を、そして一人ひとりが海と繋がっているということを知ってもらい、海を大切にする意識が浸透していくことでしょう。
 また、これらの活動で思いを同じくする団体が協力し合い、より大きな力とすることの大切さを強く感じました。八重山のサンゴに関わる多くの方と協力し合い、より豊かな海へ変わっていくよう私も取り組んでいきたいと思います。これからも「NPO法人石西礁湖サンゴ礁基金」そして「わくわくサンゴ石垣島」の取り組みにご注目ください。

NPO法人石西礁湖サンゴ礁基金:http://www.strata.jp/sangokikin/
わくわくサンゴ石垣島プロジェクト:http://www.wakuwaku35.net/

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2013年10月15日わくわくサンゴ石垣島との共同学習【石垣地域】

西表石垣国立公園 石垣 アクティブレンジャー 春口

 9月27日(金)、石垣市立大浜小学校へ出張授業に行ってきました。夏休み期間中の7月に大浜小の先生への教員研修の講師を務めたことから、今回のお話をいただくことができました。今回授業を行うのは、総合学習で地域の自然について学んでいる4年生の2クラス、55名の児童たちです。

 学校へ行くとこんなに立派な看板を作ってもらっていました。初めてのことだったのでとてもびっくりです。思わず授業を行うメンバーで記念撮影。レンジャーの制服を着ているのが私です。



写真:今回の学習はこのメンバーで行いました。メンバーの名前は看板の並びの通りです。

 私以外の私服の3名は「石垣島沿岸レジャー安全協議会」の皆さんです。石垣島では、「沿岸レジャー」のほか、「八重山漁業協同組合サンゴ養殖研究班」「白保魚湧く海保全協議会」「NPO法人沖縄エコツーリズム推進協議会」の4団体が連携し、島内の全小学校へサンゴ学習の普及を目指す「わくわくサンゴ石垣島プロジェクト」という取り組みが行われています。今回の学習は、この「わくわくサンゴ石垣島プロジェクト」と共同で実施しました。

 まずは、「サンゴのフリップクイズ」です。サンゴの基本的な知識を2択クイズにして出題し、右か左の正解と思う場所へ移動していきます。「サンゴは動物?石?」「サンゴはクラゲの仲間?それともウニの仲間?」といった問題が出るたび、子どもたちは走ったり悩みながら歩いたりしながら考えていきます。



写真:フリップクイズの様子。何度も行っているアクティビティですが、児童達がこんなに前のめりになってくれたのは初めてでした。

全員参加のクイズの後は、クラスで分かれて別々のアクティビティを行いました。まず1組は「サンゴ礁ジグソーパズル」と「出会いはサンゴ礁」。パズルではサンゴ礁生態系を描いたパズルを完成させていきます。その後、「出会いはサンゴ礁」では、「食べる・食べられる」や共生の関係にあるなど、生き物たちの繋がりを学んでいきました。
 2組は「どーなる?コーラル サンゴ生き残りゲーム」です。このアクティビティは昨年度、明石小学校でも実施していて、2013年1月9日掲載のAR日記「第3回子どもパークレンジャー」で紹介しています。(http://c-kyushu.env.go.jp/blog/2013/01/1002.html)。クラスを交代して全児童が4つのアクティビティを体験したら、授業もまとめに入っていきます。最後はサンゴ礁の海を取り巻く問題を説明し、一人ひとりで何ができるのか考えてもらいました。



写真:最後はパネルシアターを使って振り返りです。しっかりと聞いてくれました。
様々な立場の人たちがサンゴ礁の海について地域の子ども達へ伝えることはとても大切なことです。島の海を守ることは水産資源、観光資源の確保と利用など、石垣に住む人々や島を訪れる人々と密接に関係しており、どちらも健全な生態系の繋がりがあって機能する産業だからです。私たちは、これからも多くの子どもたちに石垣の自然について学んでもらい、地元を大切にする心を育んでいきたいと思います。そして、成長した子どもたちが島の担い手としてなって活躍してくれることを願っています。


※「わくわくサンゴ石垣島」では、サンゴ学習プログラムを開発し、石垣島内の小学校を中心に出張授業を実施しています。「出会いはサンゴ礁」や「どーなる?コーラル サンゴ生き残りゲーム」はこのプロジェクトで開発されました。また、サンゴ水槽を用いた学習も実施しています。関心を持たれた教育関係者の方は、ぜひ石垣自然保護官事務所(0980-82-4768)または以下のホームページからお問い合わせ先をご確認ください。
ホームページ:http://www.wakuwaku35.net/index.html
Facebookページ:https://www.facebook.com/wakuwakusango

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