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九州地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記

日本百名山・宮之浦岳の冬山登山について【屋久島地域】

2021年01月19日
屋久島国立公園 池田 裕二

屋久島の雪山

視界不良の雪山

 2020年度冬、既に2件の山岳遭難事故が発生しました。

 2021年1月に入ってからの寒波の影響で、標高約500m以上の山間部では積雪が見られました。縄文杉のある標高帯(1300m)を超える頃には50cm以上の積雪があり、宮之浦岳方面では積雪が100cmを超える部分も発生しています。

 屋久島は雨が多いことで有名な場所ですが、冬期の寒波が通過すると雨は雪となります。人が住んでいる低地に雪が積もることは稀ですが、山間部は東北や北海道の様な気象条件になり、積雪はよく見られます。冬期は北西からの冷たい風が強く吹く日が多く、稜線は吹雪が発生することも珍しくありません。強風や雪によって倒木が発生したり、稜線部ではササが茂り、その上に積もった雪がササを押し倒すように登山道へかかったりすることから、前へ進むのにも一苦労です。月の半分以上は登山に適していない条件といっても過言ではありません。そのため、日本百名山の一座である宮之浦岳をはじめとした高標高帯の冬山登山の難易度やリスクは無積雪期にくらべはるかに高いものとなります。

 積雪期では、登山口に雪が無い場合であっても、高標高帯へ進むにつれて歩行困難になる可能性が高いため、安易な入山はお控え頂くようお願いいたします。

 冬山で遭難事故が発生した場合、悪天時には救助活動※も大変困難となります。携帯電話が通じるエリアもごく限られていますので、通報すらも難しい場合があります。登山者が下山不可能となった場合、天候が回復するまで数日間、自力で緊急避難するための対策を各自で準備しておく必要があります。

(※山岳遭難での救出費用は自己負担になる場合があります。)

 現在屋久島町では、新型コロナウイルス感染症の全国的な拡大状況を踏まえ、島の医療や山岳救助体制も十分でないことなどから、できるかぎり日帰り登山をすすめています。

 冬の宮之浦岳登山は無積雪期に比べてはるかに高リスクですし、宿泊を想定した登山となる場合が多いです。今はぐっとこらえて、計画の見直しをご検討ください。

 特に以下のような条件の場合、屋久島のどの山であっても登山計画の見直しをお願いいたします。

・寒波や寒冷前線通過など、天候悪化が予想される場合。

・初めてのルートや慣れていないルートを計画している場合。

・冬山装備、緊急時用装備が十分でない場合。

・冬山に向けての体力、体調が十分で無い場合。

・単独登山の場合。