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アクティブ・レンジャー日記 [九州地区]

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2020年1月15日

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2020年01月15日マツノマダラカミキリとマツノザイセンチュウ(マツ材線虫病・松枯れ)【屋久島地域】

屋久島国立公園 池田 裕二

松枯れの様子

海岸の松枯れ

 屋久島で松枯れが目立っています。

 毎年あちこちで見られるものですが、今年の夏から秋にかけ大流行している様子が確認されました。

 島の西部、世界遺産地域内でもクロマツの枯れが多くみられます。調査の結果、クロマツの枯れはマツノマダラカミキリが媒介するマツノザイセンチュウによるものと確認されました。

 屋久島と種子島の固有種で絶滅危惧種(絶滅危惧ⅠB類)でもあるヤクタネゴヨウ(ゴヨウマツの仲間)の自生地でもヤクタネゴヨウとクロマツの枯れが見つかり、一部のヤクタネゴヨウからマツノザイセンチュウが検出されました。

 マツノザイセンチュウの感染に伴う松枯れの症状は特徴的で、あっという間にマツの葉が急に赤く変色し枯れてしまいます。屋久島に多く自生するクロマツは、この病虫害にとても弱く、元気だったマツが秋に葉をつけたまま突然枯れてしまうのです。枯れたマツの中に潜むマツノマダラカミキリが翌春に羽化し、別の木へ移動し、新たな感染木を発生させるという連鎖が発生しています。

 ヤクタネゴヨウはクロマツに比べてこの病虫害に少し耐性があるようなのですが、カミキリによる食害そのものがマツを弱らせるため警戒が必要です。

 こうした松枯れによる枯死は生態系への被害だけでなく、県道沿いの落枝や倒木対策(交通事故や電線の断線の原因)も講じる必要があるため、関係行政による協議と対策が進められています。

 具体的な対策は、まだ健全なマツについては防虫材の樹幹注入が望ましいとされています。

 生態系上、重要な地域において枯れたマツは伐倒し、工場へ運び細かくチップ化したり、焼却処分したりする方法を検討していますが、搬出が困難な場所については、伐倒して玉切りにしたマツとその切り株にビニールシートをかぶせて、内側に粘着シートを設置し、羽化して材から出てきたマツノマダラカミキリを捕虫するトラップ式の導入も検討しています。

マツノマダラカミキリ捕虫トラップイメージ

▼松枯れの発生した谷の様子【世界遺産地域含む】

画像左に見えるのは枯死したクロマツ。右奥に見える急斜面には枯死したヤクタネゴヨウが確認されました。

世界遺産地域での松枯れ

▼急峻な崖地に自生するヤクタネゴヨウ。普通の登山とは違い、道なき道を進んでやっと到着します。樹齢100年を優に超えるような大木が枯死しています。

絶滅危惧種ヤクタネゴヨウの松枯れ

崖に自生するヤクタネゴヨウの調査の様子

▼マツノマダラカミキリが侵入したマツは樹脂(まつやに)を出し、虫や菌等に対して防衛手段をとります。つまりマツが激しい攻撃を受けている証拠にもなります。白く見えているのは乾燥した樹脂です。

松枯れ病にかかったマツがマツヤニを出している

▼ヤクタネゴヨウの樹脂がしみだしている様子。抗菌作用や防虫作用があるようですが、マツノザイセンチュウに対して効いてくれたら、と願います。

マツヤニ

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