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九州地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記

山のトイレとウェットティッシュの話 【屋久島地域】

2019年08月06日
屋久島国立公園 池田 裕二

 山のトイレ内にウェットティッシュなどを投棄する方がいて、困っています。

 ウェットティッシュは水に溶けず、非常に分解されにくい構造で、トイレの詰まりの原因になります。トイレで使えるのは水溶性のトイレ用ペーパーのみです。ご理解とご協力をお願いします。

 屋久島の新高塚小屋における、困った事例をご紹介いたします。

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 日本百名山のひとつ、九州最高峰「宮之浦岳」を縦走するための主要ルート上にあり、利用者数が多い新高塚小屋には以下の3種のトイレが併設されています。

①汲み取り式トイレ

②携帯トイレブース

③自己処理型トイレ(以下TSSトイレ※1)

 これらのうち、②の一部と③は環境省が設置し、管理を行っています。新高塚小屋は無人の避難小屋のため管理人が常駐しておりませんが、トイレメンテナンスのため定期的に巡視を実施しています。

 5月の連休は1年のうちで最も新高塚小屋が混雑する期間で、トイレにも大きな負荷がかかります。

 今回はトイレに詰まりが生じ、個室内にゴミが溢れるという事態になっていました。

 個室内はハエが大量発生し、便器の横にゴミ箱としてバケツが設置され、使用後の紙がどっさりと放置されている光景に、唖然。トイレのすぐ裏には放置された大便がありました。

 すぐさま清掃に取り掛かり、放置されたゴミの内容をよく観察してみると、以下のものが混入していることがわかりました

・コットンや合成繊維等の不織布、いわゆるウェットティッシュ

・水に溶けないティッシュペーパー、いわゆるポケットティッシュ

・キッチン用ペーパータオル

・包装紙や包装ビニール、紙芯等

・生理用品

 これらのものはTSSトイレ内で分解ができない上に、詰まりや故障の原因となります。これは通常の汲み取り式トイレでも同様です。

 特にウェットティッシュの投棄が多く、トイレが詰まって故障してしまいます!登山にウェットティッシュを持っていくことは一般的になりましたが、ゴミは持ち帰るのがルールです!

 結局、放置されていた汚物やゴミはすべて回収しゴミ袋に入れて持ち帰ることとなってしまいました。

 本来はこれらのゴミは登山者自ら持ち帰るものです。マナーを守って登山を楽しみましょう。

 屋久島の登山道にはゴミはほとんど見かけませんが、トイレマナーはまだまだ課題があります。

山小屋トイレ内に放置されたゴミ

▲TSSトイレ内に投棄された汚物とゴミ。通常はゴミ箱を設置していません。

 最後に、山のトイレのマナーチェック!※2

★トイレは水に溶けるタイプのトイレ用ペーパーのみ使用する。使用量は最小限に。

★水に溶けない紙を使った場合はゴミ袋に入れて持ち帰る。

★生理用品や包装紙等は必ず持ち帰る。

★トイレはなるべく汚さないように使う。

 マナーに寛容は無く、正しいか正しくないかです。

1 TSSトイレはトイレットペーパーや、し尿を分解し、専用の土壌槽を通して水分量を減らしていく優れもののシステムです。うまく運用ができれば、山からのし尿搬出量を軽減することができるため、屋久島では今後の活躍を期待されています。

2 他の山域のトイレでは、水に溶けるトイレ用ペーパーも分別している場合があります。地域のルールに従いましょう。