2018年7月
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2018年07月09日野生動物との交通事故は減っている?増えている?【やんばる地域】
やんばる 佐藤 裕樹
はじめまして!
やんばる自然保護官事務所アクティブレンジャーの佐藤裕樹です。
今年の4月から、
アクティブレンジャーとして配属されました。
主に交通事故対策やヤンバルクイナ関係を担当しています。
ご挨拶が遅くなりましたが、どうぞよろしくお願いいたします。
出身は千葉県で、
以前は東京都立の自然公園や山梨県立の公園で、
インタープリターというお仕事をしていました。
聞き慣れない言葉で頭に「?」が浮かんだ方が多いと思うので、
とっても簡単に紹介すると、
「それぞれの地域が持つ自然や文化などを、体験を通して楽しく分かりやすく伝える人」
自然保護官事務所がある、やんばる野生生物保護センターのスタッフもインタープリターです。
「インタープリター?インタープリンター?何だか気になる!」という方は、
ぜひ野生生物保護センターにいらしてみてくださいね。
さて前置きが長くなりましたが2018年も上半期が経過したので、
担当している野生動物との交通事故について現状を振り返ろうと思います。
*交通事故確認情報は年単位で集計しています。
【やんばる地域における野生動物交通事故確認情報】
2018年7月9日現在
ヤンバルクイナ 14件(交通事故防止重点区間内 0件)
ケナガネズミ 3件(交通事故防止重点区間内 2件)
あくまで参考値ですが、
2017年の7月9日までは...
ヤンバルクイナ 18件(交通事故防止重点区間内 0件)
ケナガネズミ 2件(交通事故防止重点区間内 1件)
ヤンバルクイナに注目すると確認数は昨年比4件の減少です。
この現状を見て、みなさんは交通事故数についてどう感じるでしょうか?
Aさん「4件も減った!今年は交通事故数が少なくなりそうだ。」
Bさん「確認数は4件減少だけど、実際の事故数は本当に減っているのかな?」
Cさん「4件は誤差の範囲内じゃない?たいして変わらないよ。」
さまざまな意見があると思いますが、
この交通事故確認数はあくまで人が見つけたヤンバルクイナの死体や救護個体だけ
という点に注意が必要です。
例えば、轢かれたヤンバルクイナが命からがら森に逃げ込んだ後に死んでしまったり、
道路上の死体をカラスが食べたり持って行ったりした場合は、人の目に触れずカウントされません。
そのため、交通事故確認数が減ったから交通事故数が減ったとは限らず油断はできないのです。
そんな交通事故ですが、
ヤンバルクイナに限るとここ数年は約30~40件弱の確認があります。
ただし確認される時期は特徴的で、4月~9月の6ヶ月間に集中します。
2017年:93%(全体30件、内28件)
2016年:94%(全体34件、内32件)
2015年:86%(全体37件、内32件)
↑画像をクリックすると鮮明で大きな画像で見ることができます。
あと2ヶ月で、例年通りの事故確認数になると考えると、
10件~15件ほど確認される計算になります。
この数を、「交通事故を無くす」ことで限りなく0にすることが大切です。
野生動物と交通事故を起こさないためには、
●時間に余裕を持ち、よんな~(ゆっくり)よんな~(ゆっくり)運転をする
●道路はヒトだけでなくヤンバルクイナをはじめ、さまざまな生きものが利用する場と理解する
●「○○がいるかもしれない!」と常に心の片隅にとめておく
こんな気持ちで運転するのがよいのかもしれません。
みなさんなら交通事故を防ぐため、どうしますか?
野生生物はさまざまな原因で死んでしまいますが、
私たちの努力で減らせる死因はひとつでも対策に取り組むことが大切です。
自分自身も安全運転に気を付けたいと思います。
みなさんの野生の生きものたちへの理解とちょっとした配慮を
どうぞよろしくお願いいたします!
2018年07月05日高島の宝物を発見しよう! 【平戸・九十九島地域】
西海国立公園 佐世保 岡山桂
はじめまして!
今年5月から佐世保自然保護官事務所のアクティブレンジャーとして採用された岡山です。これから西海国立公園の平戸・九十九島地区での活動をたくさん発信していきたいと思います。
6月9日(土)、高島という島で開催された自然観察会にスタッフとして参加しました。九十九島の離島には他のイベント等で訪れたこともありましたが、有人島へ行くのは初めてで、新たな発見ができると楽しみにしていました。
高島は人口200人、島の南部に集落があり、北部は自然がそのまま残されている島です。今回のイベントは島の南端に位置する番岳に登り、自然や遺跡を見学した後、集落を散策するという行程です。
展望所から見る高島 番岳と海沿いの集落
208もの島々で構成される九十九島の中で、高島にのみ生育する植物に出会うことができました。ミヤコジマツヅラフジは、海岸に近い場所に生育し、ハート型の葉の裏にフワフワした毛がある南方系のつる性樹木です。
集落周辺で見つけたデンジソウは、葉の形がクローバーにも似ていますが、漢字の田の字に似ていることから名付けられたシダ類の水草です。なぜ同じ地域なのに高島でのみ見られるのかよくわかりませんが、島の植生の豊かさを感じました。
ミヤコジマツヅラフジ デンジソウ
番岳山頂には戦時中、対空砲台が設置され、現在は探照灯跡や聴音照射指揮所跡など戦争遺産が残されています。聴音照射指揮所から敵の戦闘機の高度や距離、速度を測定していたそうです。
天候に恵まれ、山頂の展望台からは、高島漁港と後方に九十九島の島々を望むことができました。
聴音照射指揮所の内部 番岳山頂の展望台からの眺望
島の志賀神社にはクジラの石像があります。偶然出会った島の方のお話によると、大正時代、島に大きなクジラが漂着し、高値で売れたため島民が潤ったことを記念して造られたそうです。
今回の自然観察会では、高島の豊かな自然と歴史、そして温かい島民の心に触れることができました。高島からは、世界遺産「長崎と天草の潜伏キリシタン関連遺産」の構成資産がある黒島へフェリーの所要25分で行けます。皆さんも九十九島の島めぐりを楽しんでみませんか。
2018年07月02日ツシマウラボシシジミ 【対馬厳原地域】
対馬 近藤 由佳
こんにちは。対馬厳原事務室の近藤です。
先日、生息地を調査してきましたので、今回はツシマウラボシシジミについて紹介したいと思います。
ツシマウラボシシジミの標本
ツシマウラボシシジミは、日本国内では対馬にしか生息していない固有亜種のチョウです。昔は特に珍しくないチョウだったそうですが、2013年に調査を行ったところ、ごく限られた場所でしか生息しておらず、絶滅の危機に瀕していることが分かりました。
そのため、2017年1月に種の保存法に基づく国内希少野生動植物種に指定、同じ年の3月に公表された環境省レッドリスト2017では絶滅危惧Ⅱ類から絶滅危惧IA類にカテゴリーが見直され、現在、ツシマウラボシシジミの保護増殖事業が進められています。
現地を見て分かったのは、ツシマウラボシシジミは植生の影響を受けるということです。幼虫の頃に食べる草、成虫になった際に蜜を吸う花がないとこのチョウは生きていけません。幼虫はヌスビトハギやその仲間の植物を食べ、成虫になって蜜を吸う花も限られるそうです。
ツシマウラボシシジミの食草であるヌスビトハギの仲間
これらの植物は、島内で個体数が増えて大きな問題になっているシカの食害を受けており、これによりツシマウラボシジミの生息環境が悪化し、個体数が激減したと言われています。
現在では、食草の植栽、シカ柵の設置、森林の間伐などによる生息環境の改善のほか、島外で個体を繁殖させて対馬島内に野生復帰させるなど、ツシマウラボシシジミの絶滅を防ぐために関係機関で様々な取組みが行われています。
将来、対馬の森の中でひらひらと舞う姿を普通に見ることができる。そうなって欲しいと思いました。
左:卵、中央:幼虫、右:メス成虫
7月から東京・上野の国立科学博物館で開催される特別展「昆虫」でも、ツシマウラボシシジミが一部取り上げられるようなので、機会がありましたら、見てみてください。
国立科学博物館特別展「昆虫」ホームページ
こんにちは。
7月に入り台風、豪雨と荒天が続いていますが、長者原園地、自然研究路では頭上からの落枝、また路面が滑りやすく、転倒の危険があります。
園地、自然研究路の巡視を行い、長者原ビジターセンターにて注意案内を掲示しました。
▼自然研究路、園地での危険木
くじゅう各登山道でも同様の危険性が考えられますので、十分注意して安全な登山をお願いします。