2017年3月
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2017年03月09日九州特産物リレー 有明海の「アサリ」
九州地方環境事務所 野生生物課 古賀いずみ
みなさんこんにちは。
九州地方環境事務所、野生生物課の古賀です。
九州特産物リレーということで2月担当でしたが、
3月に入ってからの投稿となりました。
お待たせしました分、皆さんに楽しんで見ていただけると嬉しいです。
私が皆さんにご紹介したい特産物は、福岡、佐賀、長崎、熊本の九州4県に面する有明海の「アサリ」です。
ある日の土曜日、昔アサリが獲れたというとある海岸へ出かけました。
砂を少し掘り返してみました。
すると・・・
このような貝が出てきたのです!
いくら掘り返してみてもこの貝しか出てきません。
形はアサリと似てますが、殻には模様がなくどれも茶色で、殻の厚さも随分薄いようです。
じっくり観察してみると、砂の中の石などにくっつけて流されないようにするための「足糸(そくし)」や、「あし」を使って砂の中に潜って行く様子など、アサリを含む二枚貝特有の生態が見られました。
殻の中央付近から、右にピンと伸びる白い糸のようなものが足糸です。
足糸を引っ張ってみましたが、結構張りがあり強いです。
中央のクリーム色のあしを出した貝にご注目ください。
あしが砂の中に入りました。
あしが動くことによって、体が回転しているのが分かります。
この貝について帰って調べてみると、どうやら「ヒラタヌマコダキガイ」という二枚貝の一種で、急激な環境の変化(塩分濃度が関係しているようです)などによって一時的に優先的かつ爆発的に出現する貝のようです。
環境が変わると消滅したものがまた出現する、実に不思議です。
この辺りで急激な環境の変化が起こったのでしょうか・・・。
さて、本題に入りますが
なぜ今回有明海のアサリを特産物として取り上げたのかについてです。
それは今、日本全域でアサリ漁獲量の激減が起こっている現状を皆さんにお伝えしたかったからです。
全国の干潟の約40%を占める有明海、特に熊本県海域においてはその昔、砂泥質又は砂質の干潟を多く有することから、日本一のアサリ漁獲量を誇ってきたそうです。
しかし、昭和52年の4万2千トンをピークに減少を続け、平成20年に入ってからはなんと千トンを下回ることもあるほど、アサリ漁獲量の減少が続いています。
減少の要因としては、埋め立てや干拓を含む海岸工事、河川改修、水質汚濁などによるアサリ生息環境の喪失、さらには底質の泥化、貧酸素化、赤潮の発生などアサリ生息環境の悪化、ナルトビエイによる食害などがあげられています。
今回残念ながらアサリは獲れませんでしたので、近くのスーパーで熊本県有明海産のアサリを買って帰りました。
アサリは酒蒸しに、おまけで購入したシジミはしじみ汁となりました!
有明海のアサリは、実入りがよく、アサリ本来のうま味に有明海の泥の風味が加わり独特の味がするそうです。
残念ながら肥えていない私の舌では「有明海の泥の風味・・・?」といった感じで微妙な味の違いを感じ取ることができませんでしたが、美味しくいただきました。
アサリは、これからが旬ということで、春の産卵を前に栄養をたっぷり蓄えています。
皆さんも旬のアサリをいただきながら、有明海に思いをはせてみませんか。
春はもうやってきています!
海岸までの道端、足元には・・・
有明海上空には・・・
2017年03月07日やんばる国立公園指定記念行事が開催されました!【やんばる地域】
やんばる アクティブレンジャー上開地
こんにちは。
やんばる自然保護官事務所アクティブレンジャーの上開地です。
3月に入りやんばるでは暖かい日が少しずつ増えてきました。
皆さんの地域はいかがですか?
事務所まわりの芝生を見ると、気温が上がり始めて最初に咲くチクシキヌランがたくさん顔を出しています。
▲お米粒の様な小さな花のチクシキヌラン
春がもうすぐやってきそうな気候の中、やんばるでは去る2月26日(日)に"やんばる国立公園指定記念行事"がおこなわれました!
昨年の9月15日にやんばる国立公園が指定されたことを皆さんとお祝いしました。
当日午前中は、東村慶佐次のふれあいヒルギ公園にてやんばる国立公園標識の除幕式を行いました。しかし、直前までまさかのどしゃぶり。
▲雨の中、除幕式の準備
どうなることやらと心配しましたが、ご参加の皆様の日頃の行いが素晴らしいおかげか開始前には雨が止み、とても良いお天気の中で進行する事が出来ました。
▲比嘉環境大臣政務官と慶佐次に広がるマングローブ林
▲いよいよ除幕です。
▲ジャーン♪
やんばる国立公園の標識は写真のモニュメント型の他に、オーバーハング式、路側式合わせて10基設置されています。これからの日記で紹介していきたいと思いますが、皆さんもやんばる国立公園に来た際は探してみてくださいね。
無事に除幕式を終えた後は、記念式典会場である大宜味村農村環境改善センターへ!
▲記念式典会場
満席になるほど大勢の方にお越しいただきました。
▲山本環境大臣より挨拶
山本環境大臣、翁長沖縄県知事、宮城大宜味村長からご挨拶した後は、新しく制作したやんばる国立公園の紹介映像を初公開しました(映像は今後、ウフギー自然館でご覧いただけます。)。
その後は、やんばるで学ぶ児童生徒達の研究発表でした。
大勢いる大人の前でみんな立派に発表してくれて、私は思わず感動してしまいました。
記念式典閉会の挨拶をした比嘉環境大臣政務官も、素晴らしい取り組みと発表にとても感銘を受けた様子でした。
▲大宜味村立大宜味小学校の野鳥と蝶の観察発表
▲沖縄県立辺土名高等学校環境科発表(クロサギの色について)
▲沖縄県立辺土名高等学校環境科発表(やんばるの川のエコツアー)
さあ、いよいよ締めくくりの祝賀会です。会場は国頭村民ふれあいセンターでした。
▲幕開けの"かぎやで風"
沖縄でお祝い事があるときに踊る琉球舞踊です。踊り手も三味線も太鼓も、みんな地域の方々です。
▲国頭村・大宜味村・東村から、環境省と沖縄県に記念楯をいただきました!
賑やかな音楽と歌に囲まれながら、閉会まで皆さんの嬉しそうな会話が途切れることはありませんでした。
一生に一度立ち会えるかどうかの行事に参加することができて、緊張しながらも貴重な時間を過ごせた一日になりました。
国立公園に指定されたこれからも引き続き、奄美大島・徳之島・西表島とともに4地域で世界自然遺産の登録に向けて地域のみなさんとがんばっていきます。多くの人にその価値の素晴らしさを伝えつつ、やんばるらしさを失わない魅力あふれる場所であるように私もお手伝いしたいです。
これからもよろしくお願いします。
今月の一枚「春の芽生え(シイノミ)」
2017年03月07日渡嘉敷島 見花原遊歩道開通式典
慶良間 アクティブレンジャー 前山
はいたい!(こんにちは!)
3月5日(日)サンゴの日に慶良間諸島国立公園指定3周年を記念して
渡嘉敷島の東側に位置する見花原遊歩道の開通式典を行いました。
見花原遊歩道は平成27年度から整備が始まり2カ年を経て完成しました。
歩道の全長は約1kmで、元々あった砂岩の道を活用して、案内板を設置し
四阿を2棟整備しました。海岸からの強風に耐えて育った木々は大きく育たず、
風衝植生を作り出しています。
リュウキュウマツは本来は20mを超える樹高に育つのですが、
見花原遊歩道では視界を遮らず、雄大な景色を見ることができます。
当日はお天気も良く、渡嘉敷村の皆様に集まって頂き、無事に開通式典を終えることができました。
開通式典の後は子供たちも交えて自然観察会を開催しました。
慶良間では花々が咲き始める季節ですので植物を観察するにはとても良い時期です。
左上オキナワシャリンバイ・右上ヒメハギ・左下シラタマカズラ・右下オキナワハイネズ
他にもたくさんの植物を見ることができました。
また、砂岩でできた道は沖縄本島を一望できる台地へとつながっており、
海風を感じながら楽しく歩くことができます。
この見花原遊歩道を島の方々と広く世界の方々に利用して頂けるように
季節ごとに観察会を開催したいと思っています。
渡嘉敷島を訪れた際は是非!歩いてみて下さい。渡嘉敷の大自然の魅力に
気付いて頂けるはずです。
2017年03月03日春の訪れ~猪の瀬戸湿原野焼き~【くじゅう地域】
阿蘇くじゅう国立公園 くじゅう 兒島音衣
先日、猪の瀬戸湿原の野焼きに参加してきました。ARとして参加したものでは今年初めてです。猪の瀬戸湿原では野焼きを毎年2月の終わり頃に行なっており、例年天気の心配だけでなく残雪の心配もあるのですが、今年は暖かく、好天が続いたおかげで、草はよく乾いていてよく燃えました。
たくさんのボランティアが持ち場につき、トランシーバーで連絡を取り合いながら作業を進めていきました。
夏に作った輪地がしっかりと防火帯の役目を果たします。燃え残った小さな火はボランティアによって消し止められます。その時に使うのが背中に背負ったジェットシューター(水の入ったリュック)です。
▲ものすごい炎があっという間に草を燃やしていきます。最初は無風だったのが、炎によって上昇気流が発生して風が吹いてきました。写真はありませんが、上空には猛禽類が飛んでいて、慌てて飛び出してくる小動物を狙っていました(去年はイノシシが飛び出てきたそうです)
みなさんは猪の瀬戸湿原をご存知でしょうか?
国道11号線・やまなみハイウェイ沿いの、由布岳と鶴見岳の山間にある小規模な湿原です。北西側に見える由布岳、北東の鶴見岳から水が流れ込んでいて、豊富な水量から湿原内にも何筋も川が流れています。湿原という繊細な環境で生息する貴重な植生を有するため、国立公園の中でも重要な場所として位置づけられています。
草原や湿原を維持するためには野焼きが重要なのですが、この場所での野焼きは一時中断されていました。
▲野焼きには多くの人の手が必要。事前に何度も話し合いをし、作業の確認を行います。一歩間違えれば死亡する可能性もある危険な作業だからです。
1960年代までは地域の住民らが放牧を行っていたため、昔から野焼きが行われていました。しかし様々な理由によって野焼きが行われなくなり、森林化がすすんでいました。
1995年頃に湿原の保全、野焼きの復活をしようという動きがあり、2005年から野焼きの実施に向けた調査や準備が進められてきました。その中心となっているのが「猪の瀬戸湿原保全の会」と「城島高原オペレーションズ」です。湿原内に進入してきた樹木の伐採、大量の不法投棄のゴミの撤去、外来種の駆除活動などに加え、植生調査、野鳥調査などを行い、野焼きを行うことの効果についてもデータとして蓄積、研究しています。
猪の瀬戸湿原で野焼きが復活して今年で6年目になります。少しずつ焼く範囲が広がっており、昔のような湿原の姿を取り戻しています。
▲野焼きのあとは真っ黒な大地となります。しかしよく見てみると、草の根までは焼けていません。
自然観察ができるトレッキングルートもあるので、野焼き後の湿原の散策をしてみてはいかがでしょうか。灰の下から新芽が顔を出しているかもしれませんね。
猪の瀬戸湿原保全の会では自然観察会を行っていますので、興味のある方はそちらもどうぞ!
黒い大地に、緑が増えていく、これからの季節が楽しみですね♪
2017年03月03日出前授業に行ってきました!【石垣地域】
西表石垣国立公園 神保彩葉
突然ですがみなさん、日本最大のサンゴ礁はどこにあるか知っていますか?
日本最大のサンゴ礁は、西表島と石垣島の間にあります。
その名も"石西礁湖(せきせいしょうこ)"と呼ばれており、
世界的にもとても貴重な場所と言われています。
※ちなみに日本は世界のサンゴ礁の北限にあたります。
そんな石西礁湖ですが、昨年の夏、大規模なサンゴの白化現象が起き、
環境省の調査の結果、石西礁湖内の約7割のサンゴが死亡してしまいました。
この事は、沖縄県内だけでなく、
全国のニュースや新聞等で大きく取り上げられました。
そんなニュースや新聞を見て、石垣島内にある、とある小学校より、
「サンゴやサンゴの白化現象について知りたい」「自分たちに何かできることはないか」との声が多数あがったということで、出前授業の依頼をいただき、先日、子どもたちの前でお話させてもらいました。
授業の中で、まずはサンゴについてどれだけ知っているか、
テストとしてサンゴクイズを行いました。
クイズは大盛り上がり!
~どれくらい知っていますか?~
【クイズ一覧】
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サンゴは石?いきもの?
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サンゴは動物?植物?
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サンゴは浅いところに住んでいる?深いところに住んでいる?
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サンゴは温かい海が好き?冷たい海が好き?
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サンゴはクラゲの仲間?ウニの仲間?
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サンゴは卵で増える?分裂で増える?それとも両方?
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サンゴは動き回る?岩にくっついて動かない?それとも両方?
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サンゴ礁とは?サンゴがたくさんある場所のこと?それとも地形のこと?
※ここでのサンゴは「造礁サンゴ」を指します。
【答え】
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いきもの
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動物
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浅いところ
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温かい海
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クラゲ
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両方
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両方
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地形
クイズの後は、サンゴの白化現象のお話。
今年度環境省で行った、サンゴの白化調査の結果をお話しました。
少し難しいかな・・と思いきや、真剣にメモを取り、熱心に聞く子どもたち。
子どもたちの想いになんだか心打たれました。
出前授業の様子
昨年、石西礁湖のサンゴの7割は死亡してしまいました。
しかし、裏を返せばまだ3割は生き残っています。
生き残った3割を左右するのは私たちです。
みなさん、"島の宝"を残してくために、まずは節電(地球温暖化防止)、節水(生活排水抑制)など、身近にできることへのご協力をお願いします。
そして、何より大切なことは、
サンゴについて知ること、興味を持つことだと思います。
私たちもこれまで以上に連携し合い、
サンゴを守る方法や対策を考えていきたいと思います。
石垣島内で出前授業をご希望の学校は、
国際サンゴ礁研究・モニタリングセンター(環境省石垣自然保護官事務所)までご連絡下さい。
TEL 0980-82-4768 (平日8:30~17:15)
みなさん、こんにちは。西表自然保護官事務所の関東です。
先日、島内で鶏小屋へ侵入し救護したイリオモテヤマネコを放獣しました。今回はその顛末の一部をご紹介します。
集落内で鶏を飼育されている方から西表野生生物保護センターへ「禽舎内にヤマネコがうずくまっている」と連絡が入りました。そこで、職員が現場へ急行し舎内へ侵入していたヤマネコを捕獲しました。
鶏小屋に侵入したヤマネコと頭部の擦り傷の様子(ヤマネコは沈静状態です)
本来であれば、その日のうちに帰したいところでしたが、ケガをしていたので、診察をするために一時収容しました。
放獣時の様子:昨年の4月とモニタリングカメラで撮影時の様子:今年の2月
じつはこの個体、約1年前にも別の理由で救護されており、その時もケガをしていたためセンターへ収容され発信機を付けて放獣しています。モニタリングのカメラには元気で傷の治った姿が写っていました。・・・が、今度は鶏小屋に侵入し御用とあいなりました。今回が2回目の収容となり、前回の放逐場所からはだいぶ離れた場所での救護となりました。
右まぶたにも傷があるので少し涙目
一通りの検査を終了し、傷はあるもののとくに大きな異常も見られなかったため数日の保護で放せる運びとなりました。
放獣場所までヤマネコを運び、休耕田近くの林縁で無事に放獣。元気でね!
現在、1日2回の電波発信機による追跡調査を行っています。最初のうちは集落へ近づかず周辺の山やマングローブ内をウロウロしている様子なのでひとまず安心。・・・だったのですが、ここ最近は集落内へ侵入したり裏山に潜伏していることを確認しています。また、このヤマネコ以外にも別のヤマネコが鶏を襲っているところを目撃されているため、島内で鶏を飼育されている方はご注意ください。
このようにイリオモテヤマネコは集落近くにも生息しています。鶏小屋にこぶし台の穴があると中へ侵入して襲ったり、網目が小さくても隙間から足を入れて中にいる鳥を引っ張り出したりします。一度、成功体験にあうと鶏がいなくなっても巡視ルートに組み込まれ何度でも訪れるようになります。
西表野生生物保護センターでは、「ヤマネコが鶏小屋へ侵入しないようにするにはどうしたらよいか?」等の相談も受け付けています。また、ヤマネコが侵入してしまった場合には速やかにご連絡いただけると幸いです。