2015年11月
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2015年11月12日国立公園とジオパーク その1 【阿蘇地域】
アクティブレンジャー 藤田
第6回日本ジオパーク全国大会 日本霧島大会が、10月27~29日に鹿児島県霧島市にて開催されました。展示ブースでは環境省のコーナーもあり、2日目に「国立公園とジオパーク」というテーマで分科会が催され、阿蘇でも課題としているテーマでもあるため、日帰りで参加することができたのでその報告をします。
◆第6回日本ジオパーク全国大会 「国立公園とジオパーク」分科会報告
国内の国立公園は32ヶ所、日本ジオパークは39ヶ所あり、その中でも24地域が重複しており、世界ジオパーク認定は8地域あります。国立公園は指定されてから(最長で)81年間「自然公園法」によって保護や維持・活用されてきました。ジオパークと連携することでさらに、保全や活用等について推進できると期待されています。
分科会の様子
分科会では、パネルディスカッションなどを踏まえて、世界ジオパークに認定されたメリットは何か?海外旅行者のニーズにマッチしているか?などの疑問や様々な課題が見つかりました。
まとめでは、今後の取組み案として以下の項目があげられました。
・重要な地域の保全と活用が共通しているが、別々に活動していた。
・今まで情報交換の場がなかった。今後は情報共有を。
・互いの強み(動植物や地質などの専門知識)を活かした人材養成も必要。
・最高のパフォーマンスを体験できる場を。
・情報発信のネットワークの構築。
・環境省のレンジャーが持つ全国での取り組みなどの情報力の活用。
全体会での分科会報告
環境省の展示ブース
◆九州ジオパークオプショナルツアー:「阿蘇火山の大地における地域連携と草原学習に触れる旅」
全国大会の一環の「九州内のジオパークを巡るツアーin阿蘇」には、全国から10名の方が阿蘇を訪れ、テーマにもある"草原環境学習"の取組みについてお話をさせていただきました。
ESDについて(草原学習館にて)
今秋にもジオパークがユネスコの正式プログラムとなると言われているため、ユネスコが推進している「持続可能な開発のための教育(ESD)プログラム」について四国西予ジオパークの蒔田さんが発表されました。みなさん理解を深めようと熱心に聞き入られていました。
その後、ジオガイドの児玉さんの案内で大観峰などを巡りました。
阿蘇の魅力が溢れ出るジオガイドの解説
それぞれに意見を交わす中で、これから国立公園とジオパークが学習で連携して互いの強みを絡めることで相乗効果を生みだすことができる!と益々意欲が高まりました。
2015年11月10日遊水池の清掃「鳥を守る」
沖縄南部 アクティブレンジャー 知念
沖縄県豊見城市にある遊水池「三角池」には、リュウキュウヨシゴイや
カワセミ等の留鳥に加え、秋から春にかけて毎年多くの渡り鳥がやってき
ます。10月下旬、清掃の下見に行ったこの日もたくさんの鳥たちで賑わっ
ていました。
【観察できた鳥】
ハシビロガモ、コガモ、キジバト、アオサギ、ダイサギ、コサギ、ヒクイナ
(亜種リュウキュウヒクイナ)、バン、オオバン、コチドリ、セイタカシギ、
タシギ、アカアシシギ、アオアシシギ、キアシシギ、イソシギ、ヒバリシギ、
ハマシギ、エリマキシギ、サシバ、カワセミ、シロガシラ、セッカ 等
▲セイタカシギ チドリ目 セイタカシギ科 絶滅危惧種Ⅱ類
その鳥たちを観ようと本土からも多くのバードウォッチャーが訪れる場所
となっています。絶滅危惧種のクロツラヘラサギが毎年越冬し、近い場所か
ら観察できることでも人気があります。
ところが、ここでもゴミの問題は深刻で、ペットボトルをはじめ、空き缶、
蛍光灯、農業用のカゴやビニール等が潮の満ち引きで流れ着き、溜まり、泥
に埋もれているものもあります。過去には、くちばしに釣り糸が絡まったク
ロツラヘラサギが確認されたこともあり、年に一度は市の職員が清掃を行っ
ています。環境省もクロツラヘラサギや多くの水辺の鳥たちをゴミによるケ
ガや事故から守る活動として、昨年から一緒に清掃活動をさせて頂いていま
す。
▲流れ着いて溜まったゴミ
▲作業の様子
泥干潟では陸地のように歩いて移動することが難しいので、ボディボード
を使い体重を分散させて這いながら進みます。拾ったゴミをボディボードに
載せて運ぶのですが、ボードはゴミで重く、脚は疲れ、油断すると深みには
まり、そこから抜け出すのは一苦労です。
▲泥と戦うレンジャー
作業をがんばっていると手や作業着はもちろん泥だらけ。泥と呼んでいる
この「泥」はヘドロなので、正直、クサいです。顔にも(時には目や口の中
にも)泥が飛び散り、苦笑いしながらも黙って仕事人を貫きます。深く考え
ることはせず、純粋な気持ちでゴミを拾うことに集中します。
▲集められたゴミ
▲作業後の様子
2時間の作業の後は、写真のとおりきれいになりました。作業をするため
鳥たちには少し迷惑を掛けましたが、すっかりゴミがなくなりきれいになっ
た状態を見ると、とても嬉しくなりました。
生きものは私たちの暮らしのそばにいます。人間の出したゴミで事故に遭
ったり、ケガをし、それが原因で死んでしまう生きものが増えているそうで
す。ゴミ捨てのマナーを守ることはもちろんですが、ゴミを出さないことを
真剣に考えねばならないと改めて考えさせられました。
作業後の池を眺めると、遠くには鳥たちが徐々に戻ってきていました。
長い時間お邪魔しました。
2015年11月09日平野~明石凸凹道サイクリング【石垣地域】
西表石垣国立公園 神保彩葉
石垣島北部地域、子どもパークレンジャー第5回目!
今回は石垣島最北端の平野という場所からスタートし、
平久保半島東海岸沿いの舗装されていない道をサイクリングしてきました。
運良く天候にも恵まれ、青い空と海と自然に囲まれながら元気いっぱい走り出しました。
途中砂利や轍(わだち)にタイヤを取られたり、
道を牛が横切ったり?!とハプニングもありましたが、
めげずに自転車を漕ぎ、およそ8㎞の道のりを2時間半かけて、
無事全員完走することができました(^^)
また、平久保半島東海岸近くには、明治45年(1912)に廃村となった
"安良村跡"があり、未だに昔の人の生活の跡を見ることが出来ます。
▲安良村跡地:家の石垣跡
▲トイレ跡
現在では考えられないトイレを目にして、
興味深そうに観察している子どもパークレンジャーのみんなでした!
自然だけでなく、島の歴史も肌で感じられる良い機会になったと思います。
石垣島北部ではこんな美しい景色を当たり前に見ることが出来ます。
この景色や残されている自然を大切に守っていきたいですね。
次回で今年度の北部地域子どもパークレンジャーは最終回です!
最終回もアクティブレンジャー日記にて公開しようと思いますので、
みなさまお楽しみに~!
2015年11月05日八幡小学校出前授業最終回~in西部地域~【屋久島地域】
屋久島国立公園 屋久島 アクティブレンジャー 水川
みなさん、こんにちは!
屋久島自然保護官事務所の水川です。
毎年全4回実施している屋久島町立八幡小学校の出前授業ですが、先日最後の授業が終了しました。
今年度の第1回から3回までの授業の様子はコチラ↓↓
http://kyushu.env.go.jp/blog/2015/07/30/
これまでの授業で国立公園や世界遺産、屋久島がかかえる問題について学習してきたので、最終回の今回は、屋久島国立公園に指定され、世界自然遺産にも登録されている西部地域に出かけて、屋久島の自然を体感してもらうとともに、自然に関する問題について、実際に見て感じてもらい、授業の総まとめをしてきました!
西部地域は、国立公園の中でも人為的な行為が特に規制されている特別保護地区に指定され、厳格に自然が保護されています。
また、すばらしい自然や野生動物との健全な関係を壊さないよう、訪れる人に守ってもらいたい西部地域ルールも策定されていて、法律だけではなく、一人ひとりのマナーで自然が守られています。
出発前に、こうした西部地域の自然を守る仕組みや取組みを紹介しました。
小学校で西部地域についての解説を聞く様子。
西部地域では、1回目の授業で学習した「植生の垂直分布」を観察しました。
屋久島が世界自然遺産に登録された理由の一つは、暖かい地域の植物から寒い地域の植物まで標高に応じて連続して分布(植生の垂直分布)していることです。
西部地域は、この植生の垂直分布を眺めることができるとても貴重な場所です。
続いて、炭焼き窯跡を見学しました。
西部地域には、明治の終わりか大正初期頃から昭和40年頃まで人が暮らしていました。
人々は畑でイモを作り、炭を作って暮らしていたそうです。
左:植生の垂直分布を観察する様子。
右:炭焼き窯跡を見学する様子。
次に向かったのは、西部地域内に建てられた植生保護柵です。
西部地域では、増えすぎたシカによって地面に生えた植物が食べられてしまい、新たな木々が育たず、森の更新ができないという問題があります。
また、植物がなくなって裸地化した土壌は、流出しやすく災害を引き起こす可能性もあります。
林内にシカが食べない植物ばかりが残ると、生態系にも大きな影響を及ぼします。
環境省では、シカ対策の一環として屋久島の様々な地域に植生保護柵を設置し、シカの食害から植物を守り、柵内の植生を回復させる取り組みを行っています。
植生保護柵の中と外の違いを観察する児童。
児童がいるのは柵の中。柵をはさんで地面の様子はどう違うでしょうか?
また、外来種についても学習しました。
下の写真のアブラギリという植物は、中国原産で、種子から油を採るために国内に持ち込まれました。
日当たりの良い場所で芽を出すと、みるみる成長し(1年で1m以上も伸びる樹木)、他の植物の生育場所を奪ってしまいます。
やっかいなことに、シカはアブラギリが嫌いで食べません。
そのため西部地域の下層植生は、シカに食べられることのないアブラギリがとても目立ちます。
左:アブラギリ。
右:児童の頭上に広がる緑の葉も全てアブラギリです。
さらに、毎年恒例となったサル・シカ糞の採集と内容物の観察も行い、糞の違いや食べ物の違い、種子を散布する役割などを学びました。
左:沢で糞を洗う様子。
右:洗った糞を観察する様子。
今回も盛りだくさんな内容でしたが、児童のみなさんは、しっかり話を聞き、メモを取り、観察して、真剣に学んでくれました。
今後は児童のみなさんがリーダーとなって屋久島について考え、発信していくことを約束し、授業を終えました。
全4回の授業で学習したことは、壁新聞にして県のコンクールに出展するそうです!
それもまた楽しみですね♪
子どもパークレンジャー認定証を授与!
これで今日から屋久島を守るレンジャーだね(^▽^)
毎年こうして屋久島について授業する機会をくださる八幡小学校の先生方には感謝の気持ちでいっぱいです。屋久島の子供たちが屋久島の自然について学び考えるきっかけ作りをお手伝いできるのはとても嬉しいことです。本当にどうもありがとうございました。
今後の児童のみなさんの成長が楽しみです!
こんにちは。石垣島では8月ごろからカンムリワシのヒナは巣立ちをはじめ、自立したお腹の部分が真っ白でとても綺麗な幼鳥を目にすることができます。
最近は自動車によるカンムリワシの交通事故が増えています。今回、交通事故に遭った2羽のカンムリワシを動物病院で治療したのち、鳥獣飼養ボランティア施設でリハビリを行い、元気に回復したので、11月6日と10日の2日間に分けて放鳥を行いました。
11月6日に放鳥したカンムリワシは、若鳥で右脚に青のHと刻印した足輪が付いていたことから、去年の1月に衰弱して保護された愛称「ヘラ」であることがわかりました。放鳥場所は救護された付近の田んぼで行いました。2回も救護されてしまったので、3回目は救護されないように祈りながら、元気よく、田んぼ近くの林の中へ飛び立っていきました。
愛称「ヘラ」放鳥の様子
11月10日に放鳥したカンムリワシは、成鳥で愛称「レッド」と名付けられました。交通事故に遭った際、翼に出血がみられ、骨折していないか心配されましたが、レントゲン検査の結果、骨に異常はありませんでした。「レッド」は11月10日に、救護された付近の牧草地にて放鳥を行いました。放鳥時は風が強く、風にあおられながら飛び立っていったため、少し心配になりましたが、きっと今頃は元気に過ごしていると思います。
愛称「レッド」放鳥の様子
放鳥する個体には、放鳥したカンムリワシであることが識別できるように足輪を装着しています。愛称「レッド」には右脚に赤のRと刻印した足輪を装着しています。今後、足輪の付いたカンムリワシを見かけた際には、撮影画像を添付の上、撮影場所、日時をカンムリワシ・リサーチのメールアドレスkresearch526@yahoo.co.jpまでご連絡ください。重要な生存確認の情報として記録させていただきますので、ご協力をお願いします。
「レッド」の足輪(右脚赤R)
12月・1月・2月の期間は、カンムリワシの子育て期間になり、カンムリワシの行動が活発的になります。この時期は親鳥がヒナ鳥のために道路上のエサを捕ることも増えてくるため、交通事故の発生件数も多くなります。法定速度を守ったドライブ運転を行えば、急に飛び出してくる野生動物の交通事故を防ぐことができますので、ご協力をよろしくお願いします!!