2015年6月 3日
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2015年06月03日口永良部島噴火~噴火警報(噴火警戒レベル5:避難)発令~
屋久島国立公園 屋久島 アクティブレンジャー 水川
みなさん、こんにちは!
屋久島自然保護官事務所の水川です。
5月29日(金)9時59分に、屋久島国立公園である口永良部島の新岳で爆発的噴火が発生しました。
この噴火により、噴煙は上空9000m以上まで上がり、火砕流も発生しました。
▲10時19分の口永良部島。屋久島の永田から撮影。
これに伴い、噴火警戒レベルが3(入山規制)から5(避難)に引き上げられ、口永良部島全域に避難指示が発令されました。
噴火発生時島にいた島民と来島者137名は、2名が体調不良や熱傷を負ったものの、全員その日のうちに無事屋久島に避難しました。
口永良部島の新岳は、昨年8月に34年ぶりに噴火し、それ以降、火山性地震が度々発生し、火山ガスの放出量も多い状態で経過し、火映*も観測されるなど、火山活動の高まりが見られ、噴火警戒レベルを4に引き上げることも検討されていた矢先の爆発的噴火でした。
※火映:赤熱した溶岩や高温のガス等が、噴煙や雲に映って明るく見える現象。
昨年の噴火で噴火警戒レベルが3(入山規制)に引き上げられ、新岳火口から登山道全域を含む2㎞以内の立ち入りが規制されていたため、今回の噴火発生時には登山者もおらず、人的被害は最小限に食い止められました。
また昨年の噴火を受けて、口永良部島では避難所を整備し、防災訓練も行われてきました。
こうした島の皆さんの噴火、防災への高い意識が、迅速な避難、全島民の無事に繋がったのだと思います。
口永良部島が噴火した頃、屋久島では、パークボランティアのみなさんと、毎年恒例のシャクナゲ登山清掃を行っていました。
10時頃、山にゴゴゴゴーという轟音が鳴り響き、「種子島でロケットの噴射実験でもしているのかな~?」なんて話していると、急に辺りが夕方の18時頃のように暗くなりました。天気が崩れたにしては異様なまでの暗さです。「雨が降るぞ-!急ごう!」と、高層湿原の花之江河に到着した途端、ぽつぽつ...。
ついに降り出したかと袖を見ると......ん?黒い!?雨じゃない!!
そこでやっとみんな火山灰が降っていることに気付き、口永良部島が噴火したのだと気付きました。
▲屋久島上空にせまる噴煙。屋久島の永田浜から撮影。
▲花之江河に降る火山灰(左)と、急いで雨具を着たパークボランティアのみなさん(右)。
辺りは火山ガスの臭いが立ちこめ、降りしきる火山灰であっという間に一面灰色になってしまいました。
屋久島出身のパークボランティアの会長も、「60年屋久島にいてこんなことは初めてだ」と驚くほど、屋久島にこれだけの灰が飛んでくることはなかったようです。
清掃作業は中止し、タオルで口を覆って急いで下山しました。
普段は透き通る綺麗な淀川も、火山灰で真っ白に!
▲噴火50分前の淀川(左)と、噴火から2時間後の淀川(右)。
▲ヤクシマシャクナゲに積もった火山灰と、車や道路に積もった火山灰(淀川登山口)。
しかし風向きや場所によって降灰の程度は大きく変わるようで、屋久島世界遺産センターに戻ると灰の影響はほとんどみられませんでした。
口永良部島では、現在も火山活動の高まった状態が続いており、今後も規模の大きな噴火が起こる可能性があるとされています。
口永良部島が噴火した場合、風向きによっては、今回のように屋久島の山にも火山灰や火山ガスが流れてくる可能性があります。もし登山中にこのようなことが起こった場合は、灰や火山ガスで体調が悪くなったり、灰で水場の水が濁り、飲めなくなったりするなど、安全に登山ができなくなることもあり得るため、決して無理をせず、慎重な行動をお願いします。
また、灰による影響を軽減するため、レインウエアーやザックカバー、飲み水や顔を覆うタオルなども準備しておきましょう!
口永良部島は、噴火警報(噴火警戒レベル5、避難)が発表されたため、現在島全域に立ち入ることができません。ご理解とご協力をお願いします。
なお、屋久島は火山島ではないため、屋久島への旅行には特に支障はありません。
★噴火に関する情報★
▼口永良部島新岳噴火に関する情報(屋久島世界遺産センターHP)
※屋久島世界遺産センターは、通常通り開館しています。
https://www.env.go.jp/park/yakushima/ywhcc/tozan/tozan.htm
▼口永良部島の活動状況(気象庁HP)
http://www.data.jma.go.jp/svd/vois/data/tokyo/STOCK/activity_info/509.html
▼口永良部島(新岳)噴火に関する情報(鹿児島県HP)
http://www.pref.kagoshima.jp/bosai/saigai/h27/kuchinoerabu.html
▼口永良部島の噴火について(屋久島町HP)
http://www.town.yakushima.kagoshima.jp/info-prevention/4707/
▼屋久島町口永良部島の噴火に伴う鹿児島への旅行について(鹿児島県観光連盟HP)
http://www.kagoshima-kankou.com/news/index.cfm#wn984
▼口永良部島ポータルサイト
避難生活が長期化することも懸念されますが、口永良部島の皆様が一日も早く島に帰れることを願っています。
対馬自然保護官事務所の蔭浦です。
まだ6月ですが、天気のいい日は夏のように暑くなりますね。
先日5月24日に行われました、「舟志の森の自然観察会」のご報告です!
この観察会は舟志の森づくり推進委員会主催で行われ、地元と企業が協力して行った間伐・植樹などの森づくり活動や、湿地の環境改良などの取り組みを紹介しながら、現在その周りにはどのような生物が生息しているのかを、参加者自らの目で観察してもらいました。
※舟志の森づくり推進委員会は、舟志区、対馬市、住友大阪セメント株式会社、ツシマヤマネコ応援団の4団体からなり、対馬の野生動物の保全を図り、人と自然が共生するモデル森を育てることを目的として活動しています。
午前は植樹地の周辺散策をしました。
当日は天気にもめぐまれ、木陰を歩くのがとても気持ちよかったです。
そしてなんと!運のいいことに、森のすぐ脇で新しいヤマネコの糞を発見しました!!
まさに、「ヤマネコの住む森」であることが分かる一場面でした。
住友大阪セメント所有の土地の中には、シカの影響を防ぐための柵やネットを設置している場所があり、その中だけ植物が豊富に生えている様子に参加者の方々も驚いている様子でした。
対馬ではシカやイノシシの影響で植物の減少が深刻です。
植物が減少すると、例えばそこに棲む昆虫類が減少するなど、対馬の生物多様性の低下が心配されます。
何でもなさそうな「雑草」に支えられて生きている多くの生物、それらの生物みんなで支えている生態系があることを、今回の観察会で実感していただけたと思います。
午後は湿地へ行き、参加者の皆さんに「生き物探し」をしてもらいました!
参加者の中には昆虫や水辺の生物に詳しい方もおられ、スタッフ一同も知らなかった生物をたくさん見つけることができました。
みなさん大人ですが、童心に帰って生きもの観察をする姿はとても楽しそうでした。
こちらの湿地でも、周囲に設置した自動撮影カメラに水鳥を捕ったヤマネコの様子が撮影されていることを紹介し、小さな生物たちが鳥類やヤマネコの生息できる環境をつくっていることを感じてもらいました。
参加者のみなさんの協力により、とても充実した観察会となりました!!
自然観観察の楽しみや身近な自然の大切さを伝えられるイベントが、今後もできたらいいなと思います。